QDT 2025年8月号
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類している。一方、Williams 8 は、歯の形態を方形・円形・尖形の三形態に分類し、顔貌の形態と上顎中切歯の外形には上下反転の相似関係があると報告しており、性別・年齢・性格などによってその印象は異なるが、顔貌に調和した歯冠形態の設計には、顔の形が大きく関与することを示唆している。 本症例においても、術前資料の分析から、患者の顔貌は円形もしくは卵形と評価され、歯冠形態決定の参考とした。 続いて顔貌と歯列の評価、具体的には、顔貌正中と歯列正中の一致、左右対称性、歯列弓の形態を観察する。また、スマイルラインは、上顎前歯の切縁を結んだラインが下唇上縁と調和していることが理想とされており、それによりインサイザルエッジポジションの評価が可能となる。 また、歯列全体の調和を図るうえでは、個々の歯の位置関係、とくに隣接歯との高低差や傾斜、歯軸や接触点の連続性といった要素の評価も重要である。図26  2 回目のモックアップ後の咬合面観。連続性のある歯列弓へと改善された。Technical Points:MI 修復を目指したアーチデザインと形態変化LEVEL NEXT STUDY CLUBリレー連載 審美修復治療成功のためのプロセス 審美修復において歯列のデザインを行う際は、顔貌・口唇・歯牙形態との調和を包括的に評価・設計することが重要となる。とくに前歯部における歯列形態は、患者の印象を大きく左右する審美的要素であり、単に排列の整合性にとどまらず、周囲の軟組織とのバランスを含めた三次元的アプローチが必要となる 3 。治療計画を立案する際は、まず顔貌の評価を行い、口唇、そして口唇を介した歯列、歯冠形態の見え方というように、マクロからミクロへと順番に評価した上で、最終的に患者のもつ個性や願望を反映させることが求められる。たとえば、天然歯の形態には、「基本三形態」─ Square(方形)、Ovoid(円形)、Taper(尖形)─が存在し 4 - 6 、それぞれの形態が与える印象やイメージは大きく異なるが、アーチデザインによってもその印象は多様に変化する。 まず、顔貌の評価を行う。Powellら 7 の理論では、顔貌の外観を円形・卵形・方形・洋なし形の 4 つの基本形に分図25  2 回目のモックアップ後の評価。歯冠の切縁側半分にOvoid 形態の要素を付与した。遠心隅角部の丸みを強調するとともに、歯軸の是正を図っている。96QDT Vol.50/2025 August page 1018顔貌評価とアーチデザイン▲

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