QDT 2025年9月号
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反射 ▼透過 ▼捉えるのではなく、レイヤリング法の一技法として理解することで、より一貫性のある審美表現が可能になる。 一方で、現在の歯科技工の現場においては、レイヤリング法を経験していない方が、最初のセラミックワークとしてステイン法を行うシチュエーションも多いと思われる。そういった方にとっても、“超極薄のレイヤリング”という視点をもってステイン法の技術を まずは切縁の立体的な表現について解説していくが、その前に、透明感に影響を及ぼす要素である“ジルコニアの表面をどのように処理するのか”について考えてみたい。ジルコニアの形態調整後、ステインを塗布する前に、いくつかの表面処理方法が存在する。たとえば、サンドブラスト処理を行う方法や、表面を研磨する方法などである。これらの処理方法の違いは、その後の色調に影響を与える可能性があるため、適切に選択する必要がある。 そこで簡単な検証をしてみると、サンドブラスト処理を行った面よりも研磨した面の方が透明感を感じることがわかる(図 1 )。この現象を前編で説明した光の特性に当てはめて考えてみる。サンドブラスト処理によって表面には凹凸がつき、表面に当たった光はあらゆる方向に乱反射する。結果、サンドブラストした面磨くことで、今後、レイヤリングを行う際にその経験が大きく活きてくると思われる。 以降では、ステイン法は“ 超極薄のレイヤリング”であるという考えに基づき、レイヤリング法で重要とされる要素、たとえば光の透過性、色の対比、構造的な設計を再確認しながら、それらをステイン法でどのように応用していくのかについて具体的にお伝えしていきたいと思う。は、研磨面と比較して白っぽく見える 1 。この現象は、ガラスを使って簡単に再現できる。透明なガラスにサンドブラスト処理を行うと、表面に凹凸がつき、曇りガラスの状態になる。そこに水をたらすと表面の凹凸が水によって埋められ、乱反射が軽減されるため、透過率は高くなる。ただし、完全に元のような透明さには戻らず、わずかに白さが残る(図 2 )。この現象はジルコニアでも同様で、この後の作業でGPを塗布しても見え方に違いが生じることは理解できる。 この結果を踏まえ、臨床ではジルグロス(松風)を用いて前歯部切縁側を研磨している。また、臼歯部では咬合面を滑沢に研磨することで対合歯の摩耗を軽減できることから、咬合面を研磨している。逆に、明るくしたいエリアは、粗造な面にしておけば多少ではあるが明度を上げることができる。図 1 a 左側は研磨、右側はサンドブラスト処理を行った。図 1 b GPを同じ厚みで塗布・焼成した状態。研磨した面には透明感が感じられ、サンドブラスト処理を行った面は少し白く見える。切縁の立体的な表現─ジルコニアの表面処理サンドブラスト処理研磨QDT Vol.50/2025 September page 1101サンドブラスト処理研磨41モノリシックに対する立体感のある表現を目指して(後編)abab図 2 a 透明なガラスにサンドブラスト処理を施すと、表面に微細な凹凸が生じ、光が乱反射することで曇りガラスのような見た目になる。図 2 b 曇りガラスの中央に水をかけると透明度が増すが、表面の凹凸の影響から元のような透明なガラスには戻らない。

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