4657QDT Vol.50/2025 September page 1134図 4 口腔内データを取り込み、矯正歯科治療のシミュレーションを行う。図 5 補綴修復治療のシミュレーションで、上顎両側側切歯の治療結果を確認する。図 6 補綴修復治療のシミュレーション結果から補綴スペースの確認ができ、形成スペースがどこに必要かが確認できる。図 7 患者が望む遠心の隙間を埋めたラミネートベニアのモックアップを行い、形態に関しての了承が得られた。レーション結果を確認および調整することで、患者に適した治療ゴールのイメージを構築することができる。このようにデジタルデータとして見える化することで、歯科医師が診断用ワックスアップと同様に視覚的に治療ゴールのイメージを把握できるだけではなく、治療ゴールのイメージを患者との共通認識とすることができるという意味で非常に有効な手段となる。また、患者にとっても治療のゴールが非常に分かりやすくなるため、治療内容にも納得しやすくなることもメリットといえる。 本症例においては、患者が当初から希望していた矯正歯科治療をともなう補綴治療のシミュレーション結果と、患者にとってより時間的・経済的負担の少ない補綴治療のみのシミュレーション結果(図 5 、 6)を提示して改めて意向を確認したところ、患者は補綴治療のみでも自身が望む審美性を得られると判断した。そこで、補綴治療のシミュレーション結果を基に、口腔内にてダイレクトモックアップを行って形態を確認した(図 7 )。モックアップにて患者の了承が得られたため、上顎両側側切歯のラミネートベニアのみの治療を行うこととなった。Clinical Points:Chair side(歯科医師による検査・診断・治療計画)LEVEL NEXT STUDY CLUBリレー連載 審美修復治療成功のためのプロセス 担当医による検査および診断の結果、以下の審美的な問題点が確認された。・上顎両側側切歯の矮小歯による歯冠幅径の不調和・下顎両側側切歯の頬側前方傾斜 患者は前歯の歯並びが気になり、他院にて矯正歯科治療を行おうとしたが、上顎両側側切歯が矮小歯であるため矯正歯科治療のみでは隙間を埋められないことが分かり、矯正歯科治療と補綴治療の併用を希望されて来院された。 担当医は検査・診断を行うとともに、患者の希望する治療結果を視覚的に具現化する目的で口腔内の状態をIOSにてスキャンし、そのデータからインビザライン(インビザライン・ジャパン)のデジタルシミュレーションを行った(図 4)。 イ ン ビ ザ ラ イ ン の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は、Align Technology 社が世界中で蓄積した治療計画のビッグデータを活用し、患者の顔貌写真に対してもっとも適切と考えられる矯正歯科治療や補綴治療結果のシミュレーションが行われる。世界中の治療データをベースに、最適と思われる提案を受けることができるのは、補助的な診断ツールとして非常に有効である。歯科医師は、そのシミュ74
元のページ ../index.html#6