QDT 2025年10月号
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QDT Vol.50/2025 October page 1215Technique)は、近年注目されているCR 直接修復の CR 直接修復は、審美性と機能性を両立しつつ、低侵襲かつ即日修復可能な治療法として、近年の審美修復領域においてその存在感を高めている。とくに、CRの物性向上や接着技術の進歩により、その適応範囲は拡大している。前歯部審美修復においては、各メーカーからナノフィラーを含有したCRや多層構造に対応した審美修復用のCRが多数リリースされており、天然歯の色調や透明感を模倣することが可能であ 一般的なCR 直接修復の適応症として、・初期~中等度のう蝕の修復・形態異常や歯冠破折の修正・歯間空隙の改善・軽度変色歯のマスキング・咬耗・摩耗による辺縁欠損の修復 などが挙げられる。これらは従来からの適応であり、最小限の切削による即時修復が可能である。 さらに近年では、ダイレクトクラウンやダイレクトブリッジといった、より大きな歯冠欠損や欠損補綴への応用もみられるようになってきている。レジン材 インジェクションテクニック(Injection Molding 応用法のひとつであり、審美領域における低侵襲かつ高精度な形態回復を可能にする。具体的には、事前に製作したワックスアップに基づくシリコーンインデッる。一方で、CR直接修復は術者依存性が非常に高い、テクニックセンシティブな治療法でもある。CRの選択、色調の調和、築盛の順序や厚み、表面性状の再現、光重合の管理、研磨工程など、すべてのステップにおいて術者の経験と技術が治療結果を大きく左右する。そのため、精度の高い修復を実現するためには、日々のトレーニングや適切な診断力が求められる。料・接着技術の進歩により、従来の適応を超えた新たな臨床応用が広がりつつある。とはいえ、CR 直接修復は長期的予後に対する材料の限界や、咬合・接着環境への配慮が不可欠であり、すべての症例に適応可能というわけではない。とくに前歯部では審美的要求が高く、マテリアル選択や築盛技術に加え、下顎運動時のガイド関係などの検査・診断が求められる。筆者の経験上、咬合関係や咬合力にもよるが、前歯部 CR 直接修復の適応範囲は歯冠の欠損が 1 / 3 以内である症例に限定する場合が多い。ここで、CR 直接修復による治療例を図 1に示す。クスを用い、フロアブルレジンを注入することで形態を再現する。とくに、シングルセントラルの補綴治療のように中切歯間の完全な左右対称性が求められる症例において、反対側同名歯と調和させることを目的としたCR 直接修復を行う場合、口腔内でフリーハンドCR 直接修復の臨床的意義前歯部 CR 直接修復(Direct Restoration)の適応範囲インジェクションテクニックによるCR 直接修復25直接修復と間接修復の融合による前歯部審美修復戦略(前編)

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