QDT Vol.50/2025 October page 1228はじめに今田裕也協和デンタル・ラボラトリー:千葉県松戸市新松戸 3 -260- 138 多数歯欠損患者、もしくは無歯顎患者に対してインプラントを用いて補綴治療が行われる場合、その補綴装置は固定性補綴装置と可撤性補綴装置の大きく 2 つに分類される。どちらを選択するのかは、患者の顎堤の状態、補綴装置の取り扱いの容易さ、経済的背景など、複数の要素によって左右されるため、その設計は多様である。しかし、いずれにしろ、インプラントを活用することにより、機能性と審美性の両立を図る補綴装置の製作が可能となり、結果として患者満足度の向上に寄与することに異論はないであろう。 このなかで、可撤性補綴装置のひとつであるインプラントオーバーデンチャー(以下、IOD)は、インプラントを使用しない粘膜支持の義歯と比較して機能回復効果が高く、高度に吸収した顎堤に対しても対応可能であることから、義歯における難症例に対して有効な選択肢となる。また、固定性のインプラント補綴装置と比較しても、必要なインプラントの本数を抑えることができる、高い清掃性、失われた口腔組織を補完し、リップサポートやフェイシャルサポートなどの審美的要素を回復する上でも有用であるなど複数のメリットをもっている(図 1 )。以上より、すべての症例において固定性補綴装置が最適とは限らず、インプラント補綴治療における選択肢のひとつとして、IODは広く臨床に用いられてきた。とくに長期間無歯顎の状態で生活していた患者においては、固定性補綴装置よりも優れた結果が得られる場合があるとの報告もある 1 。 ただし、IODの設計においては、欠損形態、顎堤形態、インプラントの埋入位置・傾斜角度などが症例ごとに異なり、使用すべきアタッチメントも一様ではない。したがって、アタッチメントの選択基準およびその適応条件を整理することは、補綴設計の精度を高め、臨床結果を安定させるうえで重要な要素となる。 本稿では、IODにおけるアタッチメントの選択基準とその適応条件について考察し、臨床上の判断指針となるよう整理していきたい。前編:IODに使用するアタッチメントの整理Feature article #2IODにおけるアタッチメント選択の基本原則─臨床でのトラブルを防ぐ基礎知識─
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