QDT Vol.50/2025 October page 1260が重要になる。資料を採得して患者の現状を把握し、その原因は何か、解決するには何が必要か、治療のゴールをどこに設定するのかを明確にしていくことが重要であり、そこから適切な治療計画を立案・実行していく。 具体的には、まず、下顎位、咬合高径、上顎中切歯の三次元的位置、咬合平面を決定し、患者の顔貌や口唇と調和した口腔内をデザインしていくことになる。とくに、審美修復治療において上顎中切歯の三次元的位置はその後の治療の基準となるために非常に重要である。補綴装置をより高いレベルで調和させるためには、われわれ歯科技工士も、補綴治療計画になるべく早い段階から関与していくことが求められると考える。 今回供覧する症例は、「上顎の前歯が外れそう」という主訴で来院されたものの、「しっかり噛めるように悪いところはちゃんと治したい」と希望された。この症例を通して、インプラントを併用する広範囲の補綴治療における筆者の考えを述べたい。山田修平LEVEL NEXT STUDY CLUBリレー連載第 4 回 インプラントを用いたフルマウス審美修復治療はじめにLIM dent studio/大阪府大阪市北区西天満 5 - 5 -16 Gフラワービル201 近年のデジタル技術の進化の結果、フェイススキャンデータやCTデータを口腔内データとスーパーインポーズして可視化することで、より精度の高い補綴治療のシミュレーションを行うことが可能になった。このように、デジタル化は、歯科治療の質の向上やワークフローに変化をもたらしている。これは、われわれ技工業界においても例外ではなく、作業の効率化はもちろん、数値化することによる適合性やフィットの安定化、クラウドサービスを通じた歯科医師とのコミュニケーション環境の構築など、多くのメリットをもたらした。また、マテリアルの進化も著しく、現在では天然歯と比較しても見劣りしない補綴装置を製作することが可能となっている。 しかし、とくに広範囲におよぶ補綴修復治療を行ううえでは、機能と審美を一体として考える必要がある。そして、審美修復治療を成功させるための事前準備としては、①初診時の患者の状態を知るために必要な資料をしっかりと採得すること②患者の希望と術者の方向性が一致していること70審美修復治療成功のためのプロセス
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