QDT Vol.50/2025 October page 1271 それでもやはり、審美性と接着力を重視する場面─とくに前歯部や小臼歯部─では、二ケイ酸リチウムがややリードしていると見るのが妥当かもしれません。です 8 、 9 。その点、二ケイ酸リチウム(プレス)は、ミリングバーの制約もないため自由度が高く、柔軟に対応できるというメリットがあります。数値には表れにくい臨床的な部分ですが、個人的には複雑な支台歯・窩洞形態においては、二ケイ酸リチウム(プレス)の方が適合させやすいと感じています。②二ケイ酸リチウムの製作法による比較 二ケイ酸リチウムはロストワックス法によるプレス成形と、CAD/CAMによる切削加工の 2 つの製作法が存在します。あるSR/MAでは、プレス成形の方がマージン適合性において良好な結果を示しましたが、統計的有意差は認められなかったそうです11。も大事。二ケイ酸リチウムの成形性の高さや透過性を活用することも大事。結局はケースバイケースな、“割り切れない”臨床のリアルがあるのかもしれません。第 4 回 ジルコニア vs. 二ケイ酸リチウム もっとも、近年のジルコニアは以前に比べて透光性が大きく改善しています。また、接着においても、MDP 系プライマーを活用したプロトコルが一般化し、「ジルコニアは接着しない」という時代は終わりを告げつつあります。 文献上のデータでは、適合精度(マージナルギャップ)はジルコニアが有利です。ジルコニアの平均ギャップが69.4μm、二ケイ酸リチウムが92.2μmで、統計的にも有意差があるとの報告もあります 7 。ただし、ジルコニアの高い精度は良好な支台歯形態が前提条件となり、マージン部に鋭縁があったりするとその真価を発揮できないのも事実① PFZはチッピングしやすい? PFZをインプラントに適用した 5 年生存率は97.6%と上々ですが、その破折率はメタルセラミックスよりも有意に高く、10倍以上の差があったとの報告もあります10。さらに、10年経過時点で71%しか生存しなかったとの報告もあります 2 。 “割れないからジルコニア”と、強度で押し切ろうとする声もよく耳にします。たしかに臼歯部や咬合力の強い症例ではジルコニアの頼もしさは揺るぎません。ただし、補綴装置が“割れる”理由は材料のせいとは限らず、支台歯形態・接着プロトコル・咬合状態といった、見えない要素が幾重にも絡み合っています。ジルコニアの強さに頼ること81今回参考にした文献についてはこちら!③適合精度:数字上ではジルコニアが有利だが……!?ジルコニアと二ケイ酸リチウムにまつわる 2 つの補足まとめ ▶ 世間的には“ 二ケイ酸リチウムはよく割れる! ”らしいが……
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