QDT 2025年11月号
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83第5回 咬頭干渉って咬合調整して良いの?今回参考にした文献についてはこちら!作業側の臼歯接触は問題ないの?アンテリアガイドがない=臼歯だけでガイドする人って将来どうなるの?まとめ ▶ 干渉しないクラウンはみんな作っていそうだが……?に近年主流のジルコニアは天然歯に比べて圧倒的に硬く、経時的な変化に乏しい特徴があります。今は干渉していなくても、今後もそうあり続けるとは限らない。そこで今、将来的な干渉リスクも考慮しつつ、生体と調和する設計が求められています。その硬さが長期的には裏目にでるかもしれない昨今、「セットされたらクラウンにはもう干渉しない」とも言っていられないようです。くに犬歯)が多く残存していたとも報告されています。反面、開咬や反対咬合といったアンテリアガイドがない人の「8020」達成率は0~1.4%と超低確率でした8、9。前歯がガイドしている=臼歯が側方接触から守られる=長期予後──そんな構図が見え隠れします。 アンテリアガイドが乏しい場合、臼歯の側方接触も強くなることが予想できます。そして、亀裂の入った生活歯の86.4%には非作業側に干渉が認められたという報告もあります7。歯の喪失リスクの第3位は歯牙破折ですから、無視できる結果ではなさそうです。 ちなみに、「8020」達成者の群を調査したところ、前歯(と 咬合設計でよく話題になるのが、「犬歯ガイドか?」「グループファンクションか?」というテーマ。やはり犬歯単独でガイドする方が力学的に有利としつつも、長期の予後では臼歯がガイドに参加しても有意な違いはないらしいです6。ここで注意したいのは、臼歯単独で強く接触している場合。それは「ガイド」ではなく、「咬頭干渉」とみなされてしまいます。つまり、犬歯に続いてガイドしている「グループ」ならOKですが、大臼歯単独でのガイドは要注意なわけです。 現在の臨床指針では、とくに非作業側の接触は付与せず、臼歯離開させることが基本とされています(義歯を除く)3。とはいえ、臼歯をどの程度離開させれば良いのでしょうか。これに関しては旧来のFGP(ワックスコアでぐりぐり圧痕をつける手法)が患者固有の顎運動に調和させるうえで有効とされています。また、3Shape社のバーチャル咬合器によるファセットに追従させた顎運動再現も効果的となるようです10。 咬頭干渉──とくに非作業側のそれは、たとえ無症状であっても、知らず知らずのうちに顎機能や咀嚼筋に静かな負担をかけている可能性が見えてきました。そして、干渉しない咬合面形態の設計・製作は歯科技工士の仕事。とくQDT Vol.50/2025 November page 1395

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