ザ・クインテッセンス 2024年11月号
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根面被覆術First Step!Step up “根面被覆術”と聞いてハードルが高いと感じる歯科医師も多いのではないだろうか.理由としては,根面被覆術を行う際に,全層弁および部分層弁の形成,減張切開,結合組織の採取,単純縫合や懸垂縫合など,多くの手技を習得する必要があるからだと思われる.また,術中は非常に繊細な手技を要求されるため,歯肉弁の穿孔や術後の出血など,思わぬトラブルを招く可能性もあり,根面被覆術が敬遠されることもあるだろう. ただし,米国の大規模調査(1億4,380万人の成人対象)によると,人口の70.7%が審美領域に歯肉退縮を有し,91.6%が全歯列のどこかに少なくとも1mm以上の歯肉退縮が存在し,年齢とともに重症度が増すと報告されており1,その需要は少なくない.患者の歯肉退縮への認識を調べたHollingerらの研究2によると,調査対象歯3,423本のうち,患者自身が歯肉退縮を自覚している218本において,象Movie芳賀 剛福岡県開業 学研都市歯科・矯正歯科連絡先:〒808‐0131 福岡県北九州市若松区塩屋3‐3‐5Takeshi Hagaキーワード: 根面被覆術,オープンアプローチ, クローズドアプローチ, 根面被覆時のリカバリーWhy Don't you Try the Root Coverage for Gingival Recession?60the Quintessence. Vol.43 No.11/2024—2360牙質知覚過敏症(以下,知覚過敏症)は36本(17%),審美障害が13本(6%),知覚過敏症+審美障害が9本(4%)と意外にも少ない.根面被覆術の効果として知覚過敏症の改善も挙げられ,Antezackら3は知覚過敏症に対して根面被覆術を行った場合,70.8%に知覚過敏症に効果があったと報告している. 国民の審美的欲求の高まりと,知覚過敏症やNCCL(非う蝕性歯頸部歯質欠損)への対応として,根面被覆術は有効な方法であるが,患者の認知度は低いと感じる.さらに,繰り返しとなるが根面被覆術への敷居を高く感じている歯科医師も多いと思われる.しかし,根面被覆術を初めて行う際には,まずは難易度が低い症例を選択し,着実にステップアップしていくことで,根面被覆術のハードルがそこまで高いものではないとわかるだろう(図1). 前編では,症例選択や検査,診断,実際の術式について解説させていただく(図2,3).また後編では,根面被覆術によって起きうるトラブルとその解決方法について,さらには根面被覆術の可能性についても解説させていただく.前 編(使い方:P3参照)スマホで動画が見られる!P67~75特 集 2プチ根面被覆のススメ症例選択,検査・診断,術式はじめに

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