表1 IOSを用いた光学印象と従来のアルジネート印象材を用いた印象採得の比較.the Quintessence. Vol.43 No.11/2024—238181印象採得にかかる時間子どもたちに与える苦痛窒息の可能性再印象印象後の模型製作模型の保存印象・模型不備の確認印象から模型製作までのバラツキ出やすい再製作の可能性輸送コスト必要器材短時間で簡便大きいありはじめから簡単現物保管でスペースが必要データ保存で省スペース難しいあり往復で必要安価器材の準備も含め時間がかかる小さいなし不備のある部分のみ複雑容易出にくいほぼなし技工所から医院の片道のみ必要高額じめてみた.実際に使用してみると,子どもたちにも医院にもメリットが多く,今まで感じていたストレスはまったくなくなった. アルジネート印象材を子どもたちに使用して以前の当院と同じような悩みを抱えている医院が多いと思われる.そこで,本稿では現在当院で行っているIOSを使用した矯正装置製作の実際を紹介し,その有効性や問題点を考察してみたい. 2024年6月の診療報酬改定でIOSを用いた光学印象が保険導入され,一般の歯科医院にも広く普及してきている.しかし,そのほとんどは成人治療に対してのものであり,CBCTや顔貌写真などのデジタルデータとの融合は,補綴治療,矯正歯科治療などの分野で活用範囲が拡大してきており,今後の歯科治療に大きな変革をもたらすものと期待される. それとはかけ離れるが,本稿では以前からの悩みの種であった子どもたちの矯正歯科治療の際に行ってきた従来法での印象採得を光学印象に変更した当院での取り組みについて紹介したい. まず,矯正装置を製作するうえでのIOSの光学印象と従来法の比較を,表1にまとめてみた. 従来法では,嘔吐反射がなく,上手に印象が採れる子どもであれば短時間で印象採得が完了する.しかし,嘔吐反射が出ない子どもは少なく,実際に嘔吐してしまう子どもも多い.当院では主に歯科衛生士が印象採得を行っているが,無事に印象採得ができるかどうかが心配でいつも大きなストレスになっていた.そのため,矯正歯科治療を早く始めたくても印象採得がネックとなって足踏みしなければならないことも多かった.IOSを用いた光学印象アルジネート印象口腔内スキャナー(IOS)
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