the Quintessence. Vol.43 No.12/2024—2626倉治ななえ東京都開業 テクノポートデンタルクリニック/日本歯科大学附属病院臨床教授連絡先:〒144‐0035 東京都大田区南蒲田2‐16‐1‐2FNanae Kurajiキーワード:表面筋電計,咬合力コントロール,リラックスの時代 筆者は1983年の開業以来,約40年間,できるだけ歯を削らない,神経を取らない,歯を抜かないことで,生涯にわたり自分の歯を1本でも多く残すことを目標に,う蝕予防・歯周病予防に力を注いできた. 1997年,キシリトールが食品添加物として厚生労働省の認可を受けてからは,ミュータンス菌の母子伝播予防と乳幼児への感染時期を遅らせる「ミュータンス・コントロール」1を開始した.生まれてすぐの赤ちゃんの口にミュータンス菌は存在しないことから,日本においても,1歳7か月から2歳7か月の感染の窓2でのミュータンス菌の母子伝播を無理なく予防する生活習慣があると考え啓発してきた.現在は,ミュータンス・コントロールを含むさらに無理なく行える削らない再石灰化治療のやり方を「フフフがスキ」3という標語で表し,患者さんの行動指針にしている. また,1986年より,歯科衛生士優先(後に専用)ユニットで,患者担当制にて歯周治療を開始した.筆者の学生時代は歯周病の講義がなかったため,1986年より,米国留学から帰国された伊藤公一先生(現日本大学名誉教授)をお招きし,地区歯科医師会の有志の先生方も交え,当院の歯科衛生士を対象に定期的な歯周病の勉強会を開始した.伊藤公一先生のご指導もあり,当院では日本歯周病学会認定歯科衛生士3名を輩出し,後輩の歯科衛生士たちも認定歯科衛生士の取得を目標に日常診療で歯周治療に力を注いでいる. 他方,30年ほど萌出期永久歯の小窩裂溝および歯冠部のう蝕予防に使用していたNd:YAGレーザーを,2022年3月より成人の根尖性難治性炎症の保存治療(ナメタメソッド4)にも応用するようになった.歯内療法を繰り返し行っても排膿が止まらないなどの理由で抜歯していたケースでも,炎症が抑えられ排膿が止まることから,患者さんの要望があれば,歯の保存期間がさらに伸びるようになった. う蝕や歯周ケアを続け,多くの歯を残せるようになった結果,浮上してきた新たな問題が歯の「破折」である.歯が割れる患者さんに共通するのは,修復Evaluation and Steps for Occlusal Force Control Using Surface ElectromyographyFrom the “Age of Biting Firmly” to the “Age of Relaxation”112はじめに特別寄稿 医院で取り組みたい!表面筋電計を用いた咬合力コントロールの評価とステップ~「しっかり噛みしめる」から「リラックス」の時代へ~
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