ザ・クインテッセンス 2025年3月号
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1.ポンティック概論(ポンティック基底面の形態決定法等)the Quintessence. Vol.44 No.3/2025—044537ポンティック基底面の清掃性ポンティック基底面形態の種類 近年では,IOS(Intra Oral Scanner)の普及にともない,インプラント補綴においてプロビジョナルレストレーションの形態を最終補綴装置に再現する手法も報告されている2,3.規格化されている既製品同士で接合するインプラントは形態を正確にマッチングすることが容易であるが,天然歯においては歯やその形成形態は個人差が多い.そもそも,口腔内におけるプロビジョナルレストレーションの調整は比較的収縮量の多い即時重合レジンで調整され,軽度のアンダーカットを乗り越えて調整されていることも多く,最終補綴装置製作後の作業模型にそれまで使用していたプロビジョナルレストレーションが復位しないことが多い.これらの問題を克服し,正確に形態再現する方法も報告されているが4,やや煩雑であり,シンプルな方法が必要だと考えられる. 筆者は,デジタル技術を応用し,プロビジョナルレストレーションによる周囲粘膜の形態調整態決定までを正確かつシンプルに行う新規術式「デジタルティッシュスカルプティング(Digital Tissue  本稿では,DTSを理解しやすいブリッジのポンティックへの応用を中心に,従来のスカルプティング手法の解説とともに本法について報告する.片側型リッジラップ型図1 前歯部ブリッジに応用されるポンティック基底面形態.(ティッシュスカルプティング)から最終補綴装置形Sculpting;DTS)」を考案した5,6.オベイト型改良オベイト型図2 オベイト型ポンティックは凸面であるため,フロスなどを通した際に,その接触効率がよい. これまで,種々のポンティック形態が報告されているが,現在主に応用されている形態は図1に示すように片側型,リッジラップ型,オベイト型,改良オベイト型であり,これに加えて臼歯部においては船底型程度だろう.理想的な基底面形態に求められる条件には,①自浄性や清掃性を有していること,②審美性を有していること,が挙げられる. ①において,自浄性は粘膜と密着し,プラークの侵入を防ぐことで達成される.粘膜とより密着しているほうが自浄性は高く,粘膜に嵌入しているオベイト型や改良オベイト型がよいだろう.臼歯部においては,これとは逆に完全自浄型とされる離底型も存在したが,舌感の悪さなどから近年応用される頻度は極めて少ない.清掃性という意味では,基底面が凸型をしているほうがデンタルフロスのデッドスペースがなく,清掃性が高いといえる(図2).ただし,ポンティック基底面の材料としてジルコニアを用いた場合,顎堤粘膜とポンティック基底面間に接着様反応が生じる可能性もあり,筆者はオベイト型ポンティックを応用した際には,欠損顎堤の吸収による食渣の停滞などが生じるまでは積極的なデンタ

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