ザ・クインテッセンス 2025年6月号
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6月審査分)1によると,感染根管処置の総件数は 2つめは,感染の原因が根管内部にない場合である.この場合,根尖孔外に起炎物質が存在していたり,感染が歯周組織や周囲の解剖学的構造に広がっていたりすることが考えられる.また,既存の治療にともなう合併症が問題となる場合もある.このような症例では,非外科的治療だけでは対処が難しく,外科的アプローチが必要になることが多い. 厚生労働省の社会医療診療行為別統計(2023年504,643件,歯根端切除術の総件数は5,593件と報告されている.このデータから,感染根管治療の約1%が外科的処置へ移行していると筆者は推測している. このような背景のなかで,非外科的治療から外科的治療へ移行するタイミングを判断するのは,術者にとって非常に難しい課題である.非外科的治療を続けることが患者の利益につながるのか,それともthe Quintessence. Vol.44 No.6/2025—1132はじめに特 集 2福岡県開業 あおき歯科・矯正歯科クリニック連絡先:〒813‐0016 福岡県福岡市東区香椎浜3‐2‐7青木隆宜 歯内療法において,非外科的治療で治癒を目指すことは,術者にとっても患者にとっても最善の選択である.しかし,非外科的治療を尽くしても期待した治癒が得られない場合には,外科的治療が必要になることもある.このようなケースはけっして稀なものではない. 外科的治療が必要となる主な原因として,大きく2つの要因が考えられる. 1つめは,術者の技術的な問題である.具体的には,破折ファイルやレッジ,パーフォレーション,あるいは解剖学的形態の複雑性が原因で,根尖部の感染源を十分に除去できない場合が挙げられる.たとえば,根管口の探索が難しかったり,複雑な根管形態が治療を妨げたりするケースがこれに該当する.Takayoshi Aokiキーワード:歯内療法,非外科的歯内療法,外科的歯内療法,患者利益Endodontic Treatment - Nonsurgical or Surgical ?Consideration of Selection Criteria62その選択基準を考える歯内療法,非外科か外科か?

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