050Sleep Medicine睡眠と認知症のリスクグリンパティック系とは認知症とアミロイドβ時代をつかむトピックスいま知っておきたい“睡眠”のこと72035204020452050(%)201510(年)14.2%12.9%12.3%523.1443.2471.615.1%15.0% 14.9% 14.7%565.5584.2579.9586.617.7%16.3%645.1616.0患者数の推計値有病率H e a l t h a n d A g i n g T r e n d s Study(NHATS)に よ る10年 間 の追跡調査では, 入眠困難(30分以内に眠れないこと)を抱える高齢者は,認知症のリスクが51%増加することが示されている 5(図 4 ). 睡眠と認知症がかかわる要因の 1つとして考えられるのが, 脳内における老廃物の排出機構, いわゆるグリンパティック系(glymphatic system)の存在である. グリンパティック系は,2012年にNedergaardらにより初めて提唱された,脳内の代謝クリアランス機構である 6 .この機構は,グリア細胞(とくにアストロサイト)とリンパ(万人)700600500400300200100系の機能を組み合わせたもので,“グリア+リンパ=グリンパティック”と命名された. おもな構造は以下のとおりである.① 動脈周囲腔から脳脊髄液(CSF)が流入.② アストロサイトのアクアポリン 4(AQP 4 )チャネルを通じて脳実質内へ拡散.③ 老廃物を巻き込みながら,静脈周囲腔を通じて排出. この過程で排除される老廃物には,アミロイドβ,タウタンパク,乳酸,サイトカインなどが含まれている(図 5 ). アルツハイマー型認知症では,脳 睡眠の質が全身の健康に影響を及ぼすことは,すでに多くの疫学研究により示されている.なかでも近年注目されているのが,睡眠と認知症の関係である. 2022年の日本における認知症患者数は約443万人, 有病率は12.3%と,高齢者の約 8 人に 1 人の割合になっている 1(図 1 ).認知症に占める割合のもっとも大きいものは,アルツハイマー型認知症であり,その60%を 占 め て い る と い う 報 告 も あ る 2(図 2 ). 最近の調査から睡眠と認知症のリスクの関係がわかってきている.たとえば,ハーバード大学関連の研究では, 約2,600人の65歳以上の男女を対象にした調査で,睡眠時間が 5時間以下の人は, 7 , 8 時間眠る人と比べて, 5 年間で認知症を発症するリスクが約 2 倍になると示された 4(図 3 ).また,米国のNational TOPICS図 1 認知症患者数は高齢者のうち約 8 人に 1 人の割合になっている 1 .TOPICS202220252030TOPICS20552060109宮地 舞東京都開業 DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA/歯科成増デンタルクリニック東 京 医 科 歯 科 大 学(現・東京科学大学)歯 学 部 歯 学 科 卒 業後,カリフォルニア大学ロサンゼルス校口腔顔面痛・睡眠歯科医学専門医コース修了.米国口腔顔面痛学会専門医,米国睡眠歯科医学会専門医.the Quintessence. Vol.44 No.7/2025—1405(グリンパティック系)睡眠と脳のクリーニング機能TOPICS
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