*東京都開業 川名部歯科医院連絡先:〒144‐0034 東京都大田区西糀谷4‐21‐4* 1 日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座連絡先:〒102‐8159 東京都千代田区富士見1‐9‐20the Quintessence. Vol.44 No.9/2025—178028川名部,倉治はじめに川名部 大*/倉治竜太郎* 1 日常臨床として歯周ポケット検査を行うなかで,もっとも深いポケットを有する頻度が高いのは下顎最後臼歯遠心部であると実感している先生も多いのではないだろうか. この部位は,プラークコントロールの困難さ,角化歯肉の欠如,第三大臼歯(智歯)の影響などにより,歯周ポケット形成につながる複数のリスク因子が集積している. Lindheら 1 による日本の牛久市での 2 年間の観察研究では,自然経過における歯周組織の破壊パターンとリスク部位の特定を目的として,265名の被験者を対象に調査が行われた.その結果,臼歯部のアタッチメントロスの発生率(1.4%)は単根歯(0.4%)の 3 倍以上であり,部位別に見るととくに下顎第二Ultimate Guide for Treating Bone Defects in the Distal Region of the Mandibular Last MolarDai Kawanabe, Ryutaro Kurajiキーワード:L-EPPT(Last molar Entire Pad Preservation Technique),下顎最後臼歯,骨欠損形態Entire Pad Preservation Technique)について,解説し大臼歯の隣接面においてもっとも高頻度に進行が認められた. また,Papapanouらの研究 2 では,下顎のなかでは第二大臼歯において骨縁下欠損がもっとも高頻度に確認され(12.2%),臼歯の残存率は75歳時点で27.5%まで低下していた.したがって,われわれ臨床家は“ 下顎最後臼歯 ”という部位に,より一層の注意と適切な対応が求められる. その重要性をふまえ,本稿では部位特有の解剖学的特徴,下顎最後臼歯部に認められる骨欠損や智歯への対応,筆者らが考案したL-EPPT(Last molar ていきたい.特 集 1解剖学的構造と新しい術式“L-EPPT”
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