1 .下顎最後臼歯遠心部における歯周炎の発生機序と智歯のかかわりthe Quintessence. Vol.44 No.9/2025—178129第二大臼歯遠心に智歯があり,歯間に歯槽骨がほとんどない状態図 1 臨床的に,第二大臼歯遠心で高頻度に認める重度の歯周組織破壊の主要な原因は,智歯抜歯にともなう直接的な外科的損13傷によるものと考えられてきた.図 2 a,b ₈は低位萌出し, 歯冠は目視可能だが分厚い歯肉に覆われているのがわかる.智歯と軟組織との境界部にはプラークや食物残渣が堆積し,₇遠心には45深い骨縁下欠損が認められる.智歯を抜去すると,第二大臼歯遠心の歯根面は抜歯窩の中で露出してしまう図 2 a 図 2 bこの場合,第二大臼歯遠心に垂直的な骨縁下欠損と深い歯周ポケットが生じる倉治22211334455666777888 歯周治療の基本は,プラークコントロールおよびリスクファクターの排除といった原因除去療法であり,そのエビデンスとして病因論を熟知することが大切である.そこで,下顎最後臼歯部に認められる骨欠損や智歯に対応するために,まずはその部位における歯周炎の発生機序および智歯とのかかわりについて理解する必要がある. 下顎最後臼歯遠心部には,深い歯周ポケットと骨縁下欠損が臨床的によく見られるが,以前は智歯抜歯にともなう直接的な損傷が主な原因と考えられて智歯抜歯後に最後臼歯遠心で骨縁下欠損が生じるメカニズムの従来の考え方半埋伏智歯の臨床像(図 2).そのため,智歯抜歯は,第二大臼歯遠心のいた(図 1). しかし, 古くはAshら 3 が, 臨床データに基づき,智歯と隣接する第二大臼歯遠心に歯周病の及ぼす影響が見過ごされてきたことに対する注意を促している. そもそも,智歯周囲は隣在歯や軟組織との境界が不衛生になりやすく,歯周組織の破壊的な進行が第二大臼歯遠心面にも影響を及ぼしている場合が多い歯周組織状態の改善効果を期待して行われることもある.
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