the Quintessence. Vol.44 No.9/2025—181159※下顎;歯根側から観察したイメージ上顎 6 番の咬頭上顎 6 番の窩下顎 6 番の咬頭下顎 6 番の窩上下顎 6 番の形態と咬合の特徴 上下顎の 6 番という歯種は,咬合の要となる歯であるため,臼歯のなかでもある程度,規格性のある形態をしており,正解が明確にある歯種である.この形態をCR 修復で再現するならば,その解剖学的特徴を把握せずにしては成し得ない. 手元に人工歯がある先生はぜひ試してもらいたい.水平な台の上に置いた下顎 6 番の人工歯の上に上顎6 番の人工歯を置くと,倒れることなく乗せることができる.この安定を生む仕組みを理解することが重要なのである.その結論をここで示してしまえば,上下顎 6 番の咬頭および隆線,窩,裂溝といった解剖学的構造同士が,うまく噛み合い,支え合う構造,配置をしているのである(図A).1 )咬頭と隆線図A 上下顎 6 番の形態と咬合の特徴.上下顎の人工歯が倒れずに乗せることができるのは,上下顎 6 番の咬頭および隆線,窩,裂溝といった解剖学的構造同士が,うまく噛み合い,支え合う構造,配置をしているからである.1 .上下顎第一大臼歯の形態と咬合 まず,上下顎の咬頭と隆線を詳しくみていく. 上顎 6 番の平行四辺形型に配置された 4 咬頭のうち,“ 近心舌側咬頭 ”の咬頭頂が下顎中央の中心窩に咬合時には収まり,残りの咬頭の咬頭頂は下顎 6番の歯冠側面の咬頭と咬頭の間の空間に挟まれるようにきれいに収まっていく(図 1). 頬側 2 咬頭と近心舌側咬頭の主隆線の終点では,下顎 6 番の“ 遠心頬側咬頭 ”を抱え込むように配置される.そして,上顎 6 番の“ 遠心頬側咬頭 ”と“ 近心舌側咬頭 ”の間に生じる斜走隆線と呼ばれる高い隆線の連なりが存在するが,これが下顎のY 字,いわゆるドリオピテクスパターン(後述)の遠心側の溝と一致して嵌合し合う関係となっていることにより,下顎の“ 遠心頬側咬頭 ”が後方に下がるのをしっかりと受け止めている(図 2).
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