Q状A髄が選択されていましたが,近年ではMTAなどの高い生体親和性を有する材料の登場により,不可逆性歯髄炎でも歯髄保存が成功する報告が増えています 1 ,2 . そのため,症状のみで即座に抜髄と判断せず,露髄時の出血状況などの肉眼的所見を基に保存の可否を判断することが推奨されます 3 .また,術前のエックス線所見において,う蝕病変が象牙質全体を貫通し,歯髄と病変の間にエックス線不透過像が確京都府勤務 四条烏丸歯科クリニック連絡先 〒600‐8007 京都府京都市下京区四条通高倉西入る76‐3Fthe Quintessence. Vol.44 No.10/2025—2128150150露髄した際に,その歯髄が残せるか残せないかがわかりません.臨床的にどのように判断すればよいでしょうか.また,歯髄を残す場合に使用する覆髄剤の表面は,どのように処理するのがよいですか?POINT 1 まずは術前診断を正確に行おう! 歯髄診断は,問診も含めたさまざまな検査を行い,そのうえで歯髄の状態を予測し,露髄時の出血の性状などを考慮しながら判断しましょう.また,歯髄を保存する際に使用する覆髄剤の表面には,接着阻害が生じない工夫が必要です.本連載の趣旨:本連載では,主に卒直後から卒後数年の若手歯科医師が日頃の臨床で出会うであろう疑問点について,Q&A 形式で解説していく. クエスチョンの分野は多岐にわたるため,その分野に造詣の深い“ 歯科医師の先輩 ”が各回でそれぞれ回答していく.キーワード: Vital Pulp Therapy, 歯髄保存, 出血の性相談者T. Sさん29歳,勤務医回答者 田中佑昂 歯髄保存療法(Vital Pulp Therapy: VPT)を適切に行うためには,術前および術中の診断が非常に重要です.まず術前には,患者の主訴や症状の把握が不可欠です.冷温による一過性の痛みのみで自発痛がない場合には,可逆性歯髄炎あるいは正常歯髄と診断され,VPTの適応となります. 一方で,自発的な鈍痛や持続痛,夜間痛がある場合には,従来,不可逆性歯髄炎と診断され,抜第 1 0 回 : 接 着 ・ 修 復 治 療 編 0 3Q u e s t i o n & A n s w e r知 り た い け ど 今 さ ら 聞 き づ ら い 疑 問 に 答 え ま す !歯 科 臨 床 S T E P U Pア ド バ イ ス
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