Dr. Hikaru Inohara猪原 光(いのはら・ひかる)・診療プロセスの効率化 患者情報の一元管理や、クラウド型ツールを用いたデータ共有により、スタッフ間の連携がスムーズになります。とくに、治療計画が変更された場合などはタイムラグなく即時に反映され、どのスタッフが対応する場合も均質で高いレベルの診療を提供することができます。・診療精度の向上 データがクラウド上に蓄積されることにより、データ分析を行いやすくなります。患者さんの既往歴や疾患リスクが可視化できるだけでなく、治療計画の精度を向上させることが可能となります。また画像診断データなどの蓄積により、診療の客観性が向上します。・患者満足度の向上 オンラインによる診療予約が可能となったり、より的確な診療を受けたりすることが可能となり、患者満足度が向上します。 医療情報をデジタル化して活用することで前述のようなメリットが得られますが、そのためには一般的に情報を「収集」「整理」「共有」の3ステップで取り扱うことが必要となります。 まず、診療を行ううえで重要となるのが、患者さんごとの医療情報の「収巻頭特集1-2 デジタル歯科最前線! ~これからの歯科医院のデジタル活用~8歯科医師・工学士・歯学博士医療法人社団 敬崇会 猪原[食べる]総合歯科医療クリニック[広島県]集」です。他院からの診療情報提供書や介護施設からの報告書、また患者さんや家族から聞き取りした内容など、複数の情報源から情報を集め、それを整理することが求められます。当院では、これらの情報を可能な限り電子化し、スタッフ間で共有しやすい形式に統一しています。たとえば、紙の診療情報提供書はスキャナーでデジタル化し、識別子(ほかと区別するための情報)を付与することで検索性を向上させています。 当院では、整理された情報を適切に管理・活用するため、サイボウズ㈱のクラウド型ノーコードツールであるkintoneを医療情報プラットフォームとして採用しています。kintoneは、従来のシステムとは異なり、ユーザーが自由にシステムを設計・製作することができます。また、柔軟なデータベース機能を兼ね備えており、外来部門と訪問部門といった、必要とする情報が異なる部門間でも、情報を適切に共有することが可能となっています。加えて、セキュリティについても、クラウドシステムが医療情報を扱ううえで守るべき3省4ガイドライン*に適合しているかについて、第三者機関である三菱総合研究所が検証したセキュリティ 当院は、外来診療部、歯科衛生士によるメインテナンス部、訪問診療部の3つの部門と、隔週の内科外来をもつ、歯科主導型の医科歯科併設クリニックです。患者さんの多くは高齢者であり、糖尿病や高血圧などの基礎疾患をはじめ、さまざまな病気を抱える方も多くいます。このような患者さんに対して、安全で適切な歯科診療を提供するため、当院ではデジタル化を推進しており、とくに医療情報の管理・共有・活用に力を入れています。 現在、わが国の歯科医療のニーズは多様化・高度化しています。とくに高齢者を中心とした患者層では、全身疾患との関連性を考慮した診療が求められます。具体的には、その方の現在の疾患状況、服薬情報、禁忌・注意事項情報の管理・運用、主治医との連携などが必要になります。そのため、従来のアナログ中心の診療体制では、患者情報の管理や共有、診療の効率性に限界が生じることが少なくありません。デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することで、これらの課題を解決し、より質の高い歯科医療サービスを提供することが可能となります。そして、DXの推進により以下のメリットが期待されます。kintone(キントーン)の活用による「整理と共有」歯科医療におけるDX推進の必要性とメリット当院のDX推進における取り組みDX化の推進が質の高い歯科医療の提供につながる
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