デンタルアドクロニクル 2025
11/180

デジタル歯科最前線! ~これからの歯科医院のデジタル活用~  巻頭特集19*3省4ガイドライン厚生労働省:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン経済産業省:医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン総務省:ASP・SaaSにおける情報セキュリティ対策ガイドライン/ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドラインが自分の役割を理解しやすくなったことで、院内全体に一体感が生まれました。 ただ、どれほどすばらしいシステムを作り上げたとしても、そのシステムが現場で適切に運用されなければ、期待された効果を発揮することはできません。システムの運用には、現場の「ヒト」の意識と主体的な行動が欠かせません。また、現場の人たちへのていねいなフォローも必要不可欠です。新しいシステムに対する不安や疑問に耳を傾け、寄り添いながら解決策を提供する姿勢が必要です。 さらに、システム自体は完成すれば完璧というものではなく、開発時には想定しきれなかった課題が現場で発生することも少なくありません。最近は、歯科衛生士からも「こうやったらもっとよくなるんじゃないの? kintoneでできないの?」と、自然と声が上がるようになりました。結局のところ、DX化の成否は、どれだけ人の力を結集し、粘り強く取り組めるかにかかっているのです。 当院は、医療の質向上と患者満足度の向上を目指し、DXを推進してきました。しかし、どんなに優れたシステムも、それを支える「ヒト」の力がなければ意味をもちません。当院では、スタッフ一人ひとりがシステムの価値を理解し、積極的に活用できるよう努めています。今後も、システムと「ヒト」の力を最大限に活用し、地域社会に信頼される医療機関としての使命を果たしていきたいと思っています。リファレンスが公開されています。 具体的に当院では、kintoneを活用して以下のような仕組みを構築しています。・患者情報の一元管理 各患者の基本情報、既往歴、現在の疾患状況、服薬情報、主治医、ケアマネジャー、キーパーソンとその連絡先などを一元的に管理しています。これにより、どの部門のスタッフでも必要な情報に迅速にアクセスできるようになっています。・情報共有の円滑化 kintoneのワークフロー機能を用いて、診療情報提供書やメモの共有を行っています。たとえば、訪問診療部が収集した情報を外来診療部やメインテナンス部と共有することで、訪問患者が抜歯などで外来受診した際に、スムーズに診療を受けられるようになっています。また、口腔内写真やエックス線写真などもクラウド上に保存してあり、外来で撮影した画像も訪問診療先で確認できるようになっています。・識別子の付与と検索機能 kintoneの検索機能を活用し、疾患名やアレルギー情報、治療歴などで患者情報を容易に検索可能にしています。また、ワークフローごとの承認システムを構築しているため、段階ごとに担当者が文書作成・送付などの作業を行ったり、確認・承認すべきリストをすぐに閲覧・決済したりすることが可能となっています。 このように当院では、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供するため、IT技術を活用した効率的な情報管理と業務運営を実践しており、その中核を担うのがkintoneです。そしてまた、この運用において極めて重要な役割を果たしているのが医療情報技師であり、サイボウズ㈱公認kintoneエバンジェリストでもある当院スタッフ、前田浩幸です。前田は、大学院で医科学(医療情報)の修士号を取得したのち、2016年に当院に入職しました。入職後、kintoneを基盤に患者さんの診療記録、予約状況、サブカルテ管理など、複数の業務を統合し、職員間の情報共有を円滑化する仕組みを構築。以前は、個別のシステムに管理されていた情報を一元化することで、医療スタッフの業務負担を軽減し、診療の質の向上が図られています。 医療情報技師にとって重要なことは、単なるシステム導入や管理者ではなく、医療現場のニーズを深く理解し、それをIT技術で実現する力をもつことです。院内のスタッフから寄せられる課題や要望を整理・評価し、問題の核を特定し、対策を考えます。そのうえで、ITによって解決すべき課題かつ、kintoneで解決可能な課題であれば迅速にアプリケーションを開発・カスタマイズします。これにより、現場のニーズに即した柔軟なシステム運用が可能になっています。 また、kintone導入によりスタッフ間の一体感も向上しました。kintoneを活用した情報共有が浸透することで、職員全員が同じ目標に向かって取り組む環境が整い、医療サービスの質の向上につながっています。とくに、業務プロセスの透明性が向上し、各自当院の医療情報スタッフ、前田浩幸氏。プロジェクターに投影した情報と手元のノートPCで、kintoneの記載内容を確認しながらカンファレンスをしているようす。kintoneを活用した業務改善の実績システムの成功には「運用」がカギ患者さんのために質の高い歯科医療を目指してニーズを理解し、ITで実現する力をもつ医療情報技師

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る