Mr.Kota Isshi 巻頭特集1-3 デジタル歯科最前線! ~これからの歯科医院のデジタル活用~10工士による相互での情報共有をCAD/CAMの設定値に反映させる必要がある。また、光学印象ではデジタルデータ特有の不具合が生じる場合があるため、CADによる設計前に光学印象データの確認が必要である。しかし、光学印象の方法や機種、ソフトウェアの設定、診療環境などにも影響されるため、歯科技工士が光学印象時に立ち合うことで診療報酬を加算できる「光学印象歯科技工士連携加算」はこれらの問題を解決する方法のひとつとして有効であると考える。 光学印象は完全に無圧の印象であるため、従来の印象法では難しい「重度歯周病」、「異常絞扼反射」、「歯科恐怖症」、「口腔内の皮弁再建」などの患者に対して、IOSと3Dプリンタの活用、さらにはデータの位置合わせの工夫により、安全に治療を進めることができた症例を本学病院では経験6している。 歯科技工士は、治療や製作工程を理解し、IOSや3Dプリンタなどのデジタル機器を習得することで、装置製作のみならず治療計画からデジタルデンティストリーに必要な提案ができるアドバイザー的な存在として、新たな活躍に期待がもてる。 光学印象による歯冠補綴装置製作は2002年 福岡医科歯科技術専門学校歯科技工士科(現・博多メディカル専門学校)卒業2002年 福岡市内歯科技工所勤務2013年 福岡歯科大学医科歯科総合病院中央技工室勤務2022年 九州歯科大学歯学部 非常勤講師(生体材料学分野)一志恒太(いっし・こうた)歯科技工士 福岡歯科大学医科歯科総合病院中央技工室3~4歯程度であれば高い水準の正確さを担保できる報告が多くある。本学病院では2013年頃から少数歯のインプラント治療に対して光学印象により模型をスキャンして上部構造を製作した症例で良好な結果を得ている7。また、本学病院では医療機器の整っていない訪問診療の現場にて、誤飲・誤嚥のリスクを軽減させるためにIOSを活用した研究を行っている8。光学印象データからインプラントオーバーデンチャー(IOD)を製作して現義歯との比較評価した結果、現義歯との間に有意差がないことがわかっている。しかし、遊離歯肉部のリラインが必要になった症例も経験している。そのため、現在では現義歯がある場合に義歯適合面、義歯全体、適合調整材を付与した面などのいずれかをスキャンし、そのデータから正確にコピーデンチャーや新義歯を製作する方法を臨床応用している。また、顎義歯や摂食嚥下リハビリテーションに使用する舌接触補助床6、9、10、軟口蓋挙上装置、栓塞子付き口腔内装置(スピーチエイド)などの複製方法や新規での製作方法にIOSを活用しており、正確さに関する研究を進めている(図1)。 IOSを歯科技工に応用すると、スキャナーの取り回しに自由度があるため、デスクトップ型スキャナーではスキャンできない複雑な形状や大型の計 歯科補綴領域における光学印象は、1971年のFrançoisDuretによる基本概念の報告1、2や1979年のWernerH.Mörmannによるプロジェクト発足からとされている。その後、2000年代に入り、口腔内スキャナー(In-traoralscanner、IOS)を用いるシステムの普及が進んだ。日本では、2014年に薬事法(現在の薬機法)承認機器として一般名称に「デジタル印象採得装置(クラスⅡ)」が追加3、4され、2024年に保険治療でCAD/CAMインレーに対しての光学印象が適用5となった。そのため、一般臨床における応用に加速度がついてきている。 歯科技工士は光学印象データを基にした歯冠補綴装置の製作を担っていることやさらなるかかわりに期待されているため、本稿では「光学印象の臨床」と「光学印象による歯科技工」、「光学印象の教育における歯科技工士の存在価値」、「デジタルデンティストリーの将来像」についての4項目における歯科技工士の可能性を解説する。 光学印象を臨床応用するには、模型を使用しないモデルレスによる歯冠補綴装置の製作や診療室での調整が基本であることから、歯科医師と歯科技光学印象による歯科技工はじめに光学印象の臨床光学印象の活用と歯科技工士のかかわりについて
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