デジタル歯科最前線! ~これからの歯科医院のデジタル活用~ 巻頭特集111要な技術であるため新たな付加価値に期待したい。測物の細部に至る再現が可能となった。また、起動時間やスキャン時間などが短縮できるため、作業効率の向上に繋がる可能性がある。一方で、取り回しに自由度があるためスキャン精度(繰り返し精度)に個人差が生じやすくなるのは課題である。 本学では、2016年から歯学部学生に対してデジタルデンティストリーの教育を、冠橋義歯学分野の教員による講義、筆者によるIOSのデモと機材の解説を行っている。最近では、口腔インプラント学分野の教員と筆者によりインプラント治療における光学印象の講義と実習を行っており、学生アンケートによる研究では理解度が向上し、教育効果があることが示唆11された(図2)。また、他大学の歯学部にて生体材料学(歯科理工学)の教育としてデジタルデンティストリーについて歯学部学生と大学院生に教育を行っている。 歯科技工士への教育は、歯科技工士専門学校が実施している厚生労働省の人材確保対策事業にて、就労歯科技工士を対象に、光学印象の概要から実習までを教育している。「光学印象歯科技工士連携加算」が保険算定できるため、歯科技工士養成校でも光学印象の教育が進むことが望まれる。 歯科技工士は、2020年代初期から主にインプラント治療に歯科用CAD/CAM装置を活用してきた。インプラント治療ではシームレスに治療計画から上部構造製作までデジタル化がなされている。また、他分野での応用が可能である。そのため、デジタル機器の活用やデジタルデータをどのようにシームレスに繋ぐことができるかなどの知識を習得した歯科技工士は、光学印象を含めたデジタルデンティストリーの教育に参加することで、IOSなどの機器や臨床応用の解説のみならず、その後の歯科技工への繋がりやデータの取り扱いの詳細について教育ができるため有益であると考える。 光学印象は、患者の負担を軽減してくれることや、医療従事者にとっては診療の効率化、感染経路の遮断、製作工程の効率化などに有効であり、歯科医療従事者の人材不足や医療安全などの問題を解決する糸口になりえる技術である。 デジタルデンティストリーにおいて遠隔技術による診療12や歯科技工士連携13、14、15、さらに既存の補綴装置設計AIなどの機能拡張や光学印象データを使用できる環境が整えば、歯科技工の自動化にも加速度がつき、歯科技工の安定供給に繋がる。一方で、日本の歯科技工士の技術力は高水準であることから、特定業務に注力して独自性を発揮するような環境も構築しやすくなると考える。さらなるデジタル化のためには、電子歯科技工指示書などによる情報共有方法の仕組みづくりが急務であり、医療データの管理、ヘルスケアアプリケーションなどのクラウド型プラットフォームの歯科における応用は可能性が大いにあると考えるため、歯科技工士を含めイノベーションに将来性を感じている(図3)。 光学印象は歯科のDX(DigitalTransformation)の入り口として重図1 顎義歯製作におけるIOSの活用。図2 インプラント治療における光学印象の講義と実習。学生アンケートによる研究では理解度が向上し、教育効果があることが示唆された(本図は参考文献11より引用改変)。図3 医療データの管理、ヘルスケアアプリケーションなどのクラウド型プラットフォームの歯科における応用の可能性。参考文献1. 末瀬一彦,宮崎隆.基礎から学ぶCAD/CAMテクノロジー.東京:医歯薬出版,2017:38-39.2. Duret F. Professur François Duret. 2024. https://www.francoisduret.com/(2024年11月17日アクセス)3. e-gov法令検索.医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律.2024. https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145/20240401_505AC0000000036(2024年11月17日アクセス)4. 佐藤博信,別府健介,一志恒太,水町栄美理.第1章 CAD/CAMの基礎知識 光学印象成功の秘訣. In:末瀬一彦,宮﨑隆(編).編補綴臨床別冊 最新CAD/CAM歯冠修復治療.東京:医歯薬出版,2014:51-56.5. 厚生労働省保険局医療課. 令和6年度診療報酬改定の概要【歯科】令和6年3月5日版. 2024. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251542.pdf: 158.6. 一志恒太,谷口祐介,高江洲雄,杉本太郎,加倉加恵,城戸寛史.3Dプリンタを歯科技工に応用する方法と条件.日歯技工誌 2023;44(2): 60-66.7. 城戸寛史, 佐藤博信. Encodeインプレッションシステムの臨床.In:日本デジタル歯科学会(監).Digital Dentistry YEAR BOOK 2015.東京:クインテッセンス出版, 2015, 179-186.8. Taniguchi Y, Kakura K, Tsutsumi T, Isshi K, Morita H, Mizutani S, Tohara H. A study of the usefulness of implant superstructure production methods using optical impression systems and CAD/CAM techniques - targeting application during home visit dental treatment. J Interdisciplinary Clinical Dentistry 2019 ;1 : 12.9. 山口浩平,谷口祐介,一志恒太,吉田早織,城戸寛史,戸原玄.摂食嚥下リハビリテーションにおけるデジタル技術の活用. 日本歯技 2020;617:37-44.10. Yoshida S, Yamaguchi K, Taniguchi Y, Isshi K, Kido H, Tohara H. Design of palatal and lingual augmentation prostheses by using an intraoral scanner for a patient after a glossectomy: A clinical report. J Prosthet Dent. 2023 Aug;130(2):267-270.11. 加倉加恵,谷口祐介,内田竜司,柳束,松本彩子,根来香奈江,江頭敬,一志恒太,城戸寛史.臨床実習生の口腔インプラント学実習前後の光学印象に対する意識調査.福岡歯科大学学会誌 2024;50 (2):35-43.12. 髙江洲雄,谷口祐介,加我公行,一志恒太,松浦尚志,城戸寛史.オンライン診療を想定したデジタル画像による支台歯形成の評価に関する新たな試み(第一報). 日本遠隔医療学会雑誌 2021;17 (1):2-7.13. 加我公行,谷口祐介,髙江洲雄,杉本太郎,一志恒太,伊藤竜太郎,城戸寛史,松浦尚志.歯科医師と歯科技工士に対する歯科技工士の立ち会いについてのアンケート調査 : オンライン診療に向けて—Questionnaire survey regarding the presence of dental technicians during treatment : Toward telemedicine. 日本遠隔医療学会雑誌 2022;18(1):29-33.14. 高江洲雄,谷口祐介,加我公行,一志恒太.補綴歯科治療におけるオンライン診療の有効性.日本歯技 2022;639:25-31.15. 伊藤竜太郎,髙江洲雄,谷口祐介,加我公行,一志恒太,小嶺亮,都築尊,城戸寛史,松浦尚志.オンラインによる歯科技工士のろう義歯試適への立ち会い. 日補綴会誌 2022;14(4):373-8.デジタルデンティストリーの将来像光学印象の教育における歯科技工士の存在価値
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