デンタルアドクロニクル 2025
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Dr. Katsuichiro Maruo丸尾勝一郎(まるお・かついちろう)巻頭特集1-4  デジタル歯科最前線! ~これからの歯科医院のデジタル活用~122005年、東京医科歯科大学歯学部卒業。2012年、米国・ハーバード大学歯学部インプラント科ITIスカラー・研究員。2018年、三軒茶屋マルオ歯科開院。2021年、神奈川歯科大学大学院歯学研究科口腔統合医療学講座補綴・インプラント学分野特任准教授。2021年、恵比寿マルオ歯科審美・インプラントスタジオ開院。2022年、歯科技工所NEXT NODE設立。2024年、東京科学大学インプラント外来非常勤講師。丸尾:「歯科医院のデジタル活用」には、経営と臨床の2つの側面があると考えています(表1)。まず、経営面において、当院が取り組んでいるデジタル化としては、電子カルテ、WEB予約システム、キャッシュレス決済、ホームページをはじめとしたさまざまなWEBマーケティング施策など、患者の利便性を高めるものが多く、これらは今後の運営において不可欠であると思います。また、今後は人口減少の影響によってますますスタッフの雇用が困難となっていくことが予想されるため、自動精算機やチャットボットなどスタッフの負担を減らすためのデジタルツールの導入も検討しています。 一方で、臨床的な側面ですとCAD/CAM技工に特化した歯科技工所(以下、技工所)の設立(図2)や、治療シミュレーションソフトの活用、画像管理のクラウド化などを行い、シームレスな治療ワークフローの確立を目指しています。これによって、より早くかつ精確な治療を効率よく行うことができるようになり、結果的に歯科医院運営にも好影響をもたらしていくと考えています。——CAD/CAM技工に特化した技工所の設立について、院内ラボではなく敢えて院外に設立した理由に加えて、コスト面やスタッフの働き方なども含め、詳しく教えてください。WEB会議ツールを活用したセミナーの開催や講義動画の販売など、教育の形に変化が起こりました。また、マスクの着用が当たり前の世の中になり、アライナー矯正が普及したため、矯正治療を目的としたIOSの導入が進みました。さらに、7年前の特集(図1)の「おわりに」で述べたとおり、2024年にIOSは保険収載され、現在では多機能のものから安価なものまで幅広いラインアップが市場に登場し、日本においても普及しています。 ここ数年では、逆に「デジタルデンティストリー」という言葉を聞かなくなったように思います。これは、すなわちさまざまな臨床分野においてデジタルの活用が多様化され、浸透していることを意味しているのではないでしょうか。また、臨床だけではなく、歯科医院運営(経営)においてデジタルの重要性はいっそう高まっているように感じます。他業種で一般的となっているWEB予約やキャッシュレス決済など患者の利便性を高めるためのツールとして、デジタルツールの導入が一般的になっています。——すでに先生からも言及いただきましたが、現在、丸尾先生の医院では、IOSをはじめとするデジタルツールを臨床や歯科医院運営にどのように活かしているか、具体的な取り組みやアイデアについて教えてください。 Quintessence DENTAL Implan-tology誌の2018年4号にて特集記事「口腔内スキャナはインプラント臨床に何をもたらすのか」をご執筆いただいた丸尾勝一郎先生に、あらためて歯科医院のデジタル活用についてお話を伺った。(編集部)——当時から7年近く経過し、いま読み返してみると「口腔内スキャナ(IOS)ってなにもの?」という時代の空気感が歯科界に漂っていたことが強く思い出されました。また、それに対する見事な回答と将来予測の的確さは、丸尾先生の先見の明を裏付けるものだと感じます。当時と現在を比較して、「歯科医院のデジタル活用」がどのように進化し変遷してきたか教えてください。丸尾:この7年間で、歯科におけるデジタル化は目まぐるしい進化を遂げてきたといえます。特集を書いた当時は、まだ「デジタルデンティストリー」という言葉が多用され、デジタルを活用することが珍しい時代で、読者からも「デジタルで一体何ができるの?」という反応だったと記憶しています。そして、当時IOSを導入していたのは、インプラント治療やセラミック治療のような自費治療を多く手掛けられている先生が大半でした。2020年よりコロナ禍となり、教育面でのデジタル化が進みました。具体的には、医院スタッフの確保や負担を軽減するためにもデジタル活用は必要不可欠

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