Dr. Yasushi Nishi西井 康(にしい・やすし)巻頭特集1-6 デジタル歯科最前線! ~これからの歯科医院のデジタル活用~模型から歯を切り出し、再配列したところ。これにあわせてアライナーを製作します。16東京歯科大学歯科矯正学講座 主任教授日本矯正歯科学会 認定医・指導医・臨床指導医1986年 東京歯科大学卒業1998年 東京歯科大学歯科矯正学講座 助教2001年 博士(歯学)号取得(東京歯科大学)2007年 米国南カリフォルニア大学歯学部 Visiting Scholar2014年 東京歯科大学歯科矯正学講座 講師2018年 東京歯科大学歯科矯正学講座 准教授2019年 東京歯科大学歯科矯正学講座 主任教授 現代社会の特徴は、ChatGPTなどに代表されるようにコンピュータテクノロジーの進化にあります。歯科は、この流れの中で「デジタルデンティストリー」時代に入りました。 矯正治療の分野も例外ではなく、2000年ごろにはコンピュータテクノロジーの進化が、それまでのアライナー矯正の手法――患者さんの歯列模型から1本1本歯を切り出し、それを再配列させたものをもとにアライナーをつくる――という面倒な作業から私たちを解放してくれました。 口腔内スキャナーで患者さんの歯列をスキャンし、治療前から治療終了までの歯列をコンピュータ上でシミュレーションできるようになったのにくわえ、さらにCAD/CAM技術により、段階ごとの歯列に対応したアライナーを、一度に大量につくれるようになったのです。 まさに革新的な技術進化が起こりました。これが現在のアライナー矯正の隆盛につながっています。 しかし近年、アライナー矯正の普及にともない、医療トラブルの報告も急増しています。医療トラブルはもちろんワイヤー矯正でも存在しますが、アライナー矯正の場合、装置がいままでになかったものであるがゆえに、その特性を患者さんそして歯科医師側もまだ十分に認識・評価できていないとこ 1995年にJohn Sheridan氏が今日のアライナー矯正の元となる装置を報告しました。しかしこの装置の製作には、患者さんの歯列模型から1本1本歯を切り出し、それを再配列させてからアライナーをつくるという作業が必要で、歯科医師側にも患者さん側にも多くの労力と時間を要しました。そのため、普及には至りませんでした。患者さんの歯列模型(初診時)。いまろに、トラブルの原因があると思われます。 くわえて、ワイヤー矯正と対比して手軽さをメインに宣伝されているために、患者さんがアライナー矯正に過剰な期待を抱いていることも影響している感があります。 「透明なマウスピース(アライナー)を入れるだけで矯正ができる」手軽さは、医療の普及という面ではすばらしいことです。しかし手軽ではあるものの、万能とはいえません。歯科医師側と患者さん側の認識のギャップを埋めるために、「アライナー矯正において患者さんに伝えておくべきこと」を整理してみたいと思います。過去のアライナー矯正の手法デジタル化がもたらしたアライナー矯正の隆盛そんな現在、患者に伝えるべきことi
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