デンタルアドクロニクル 2025
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デジタル歯科最前線! ~これからの歯科医院のデジタル活用~  巻頭特集1アライナー矯正の限界を伝える治療前の十分な説明が不信やクレームの回避にアライナー矯正の限界を知る1. Alwafi A, et al. Overview of systematic reviews and meta-analyses assessing the predictability and clinical effectiveness of clear aligner therapy. Dentistry Review. 2023;3(4):100074. 17 患者さんは治療について、あらかじめ「こうなる可能性があります」と伝えられていれば、いざそうなっても「先生の言ったとおりでした」と納得してくれやすいものです。逆に説明を受けていない状況が生じてしまうと、その後にいくら言葉を尽くして説明しても、不信やクレームへとつながりかねません。ですから、アライナー矯正中に起こり得るケースについては、前もって伝えておくのがよいでしょう。 製品にはライフサイクルというものがあり、そのサイクルは「開発期/導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つに分かれます。アライナー矯正はまさにこの成長期にある一方、ワイヤー矯正は成熟期にあります。もしアライナー矯正が現在の限界を克服し万能性を獲得したとしたら、矯正治療のゲームチェンジャーとなり得ますが、それはまだ先のこと。歯科医師と患者さんが現状のアライナー矯正をよく理解することで、双方にとって有益な結果になることを望みます。 歯科医師としては、アライナー矯正について次のことを認識しておきたいところです。● アライナー矯正では対応が困難な症例もある。 ・ 骨格性不正がある (下顎前突や上顎前突など) ・叢生の量が大きい  ・ディープバイト(過蓋咬合) ・歯体移動が必要となる  といった症例には適さない。● アライナー矯正には独特の歯の動きがある。● シミュレーション通りに歯が動かないことも多い。 歯列に被せるように装着するというアライナーの構造上、歯の移動は傾斜移動になります。また、歯の平行移動や挺出はどうしても不得意です。想定外の歯の移動が生じたときのために、ワイヤー矯正の基本的なテクニックは押さえておいたほうがよいでしょう。 また、これはアライナー矯正に限りませんが、診断能力の向上は必須です。自分の今の技術で対応できる症例なのかを判断し、必要なら他の専門医に紹介することも考慮すべきでしょう。 これらをふまえて、患者さんに伝えるべきことを整理すると、以下となります。 アライナー矯正は、装置が目立ちにくいという審美的なメリットが大きい反面、● 可能とする歯の動きに限界があるた● 所定の時間、欠かさず装着しないと● シミュレーション通りに歯が動かな● 最後の仕上げには、ワイヤー矯正を アライナー矯正は、「予測通りの歯の動きを100%とすると、55〜72%程度の達成率となる」との報告もあります1)。その場合、口腔内スキャナーの再撮影(リファイン)やワイヤー矯正の併用が必要となります。 また、アライナーだけですべての治療が完結すると患者さんは考えがちですが、実際には、最後の微調整にワイヤーを用いることも多いです。ワイヤーを併用する可能性については、伝えておくべきでしょう。め、適応でない症例もある。歯が動かない(ワイヤー矯正と違い患者さんの協力が不可欠)。いことも多い。併用することもある。骨格性不正がある(下顎前突や上顎前突など)叢生の量が大きい(写真はⅡ級叢生)ディープバイト(過蓋咬合)歯体移動が必要となるアライナー矯正では対応が困難な症例参考文献

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