to Kasahara Dr. Aki笠原明人(かさはら・あきと)「魅せる」治療で魅力を伝える マイクロスコープを用いた診療は、自己満足に終わらず他者にその魅力を映像で伝えられる強みがある。なお筆者は、術前また術後に数分~10分程度は必ず映像を用いた治療説明時間を確保するようにしている(図2)。 また当院では、カリーナシステム(マイクロスコープ下で記録した動画を迅速かつ効果的に患者さんへプレゼンテーションできるシステム)を採用し、50インチのモニターに投影している。二画面比較やアノテーション機能(画面上に直接文字入力が行え、さまざまな色で線描画できる機能)の搭載など、本システムは他と一線を画すシステムであるように思う。マイクロスコープの機種を問わないので、ぜひ検討いただきたい。 マイクロスコープによる診療を医院に定着させるには、技術習得の前にマイクロスコープを理想の位置に配置するとともに診療時間を確保する。そして、1人以上のアシスタントの配置と治療の前後には必ず動画を見せることが必要条件となる。「中途半端」な診療スタイルはNG 筆者の経験上、「魅せる」治療で魅力を伝えることで患者満足度は飛躍的に向上するが、単価を変えられない診療体系でチェア台数を制限して患者さ巻頭特集1-7 デジタル歯科最前線! ~これからの歯科医院のデジタル活用~182008年、東京歯科大学歯学部卒業。2010年、同大学千葉病院臨床研修過程修了。同年、静岡県医療法人社団八龍会すずき歯科医院入職。2016年、笠原デンタルオフィス勤務(副院長)。2020年、銀座並木通り歯科非常勤勤務(歯内療法分野専門担当)。日本顕微鏡歯科学会認定指導医、2023年より同学会理事を務める。 日本に歯科用マイクロスコープ(以下、マイクロスコープ)が登場してからおよそ30年となる。導入件数は飛躍的に伸びてきている一方で、マイクロスコープをすでに導入している先生方にアンケート調査を行うと、ほとんどの先生方が「活かせていない」と回答される。一定の水準ではマイクロスコープが普及してきた現在においても、高級なオブジェとなっている歯科医院の多さがうかがえる。 一方で、マイクロスコープを用いた診療を自院の特徴や要の1つとして打ち出し、臨床だけでなく経営も安定させている歯科医院も存在する。二極化する両者には大きな差があるわけだが、なぜそのような状況が起きているのか? 環境的な要因また技術的な要因の2つから考察したい。戦略的な配置と仕様 筆者のもとにさまざまな歯科医院から相談が寄せられるなかで、マイクロスコープが理想的な位置に設置されていないケースは多い。当院では、図1のようにマイクロスコープを設置している。筆者は、開業以前より多くの歯科医院を見学させていただき、患者誘導路やアシスタントの配置の観点から天吊り仕様がもっとも良いと感じた。ただ、建物の構造上の問題や上階の状況(動きが大きくある業態だと振動を拾う場合がある)も事前に調べておく必要がある。 マイクロスコープの仕様と配置はきわめて重要で、成功を左右する大きな要因といって良い。デジタル歯科の分野においても、IOSや3Dプリンターの配置と機種選択をどうするか? 今後の設備導入計画もふまえてマイクロスコープ導入と同様の事前準備が必要であると思われる。特に都内のビルテナント開業(筆者も同様)などでスペースを十分に確保しづらい状況ではなおのことである。 当院では、マイクロスコープを診療の要とすべく、チェアを5台設置できるスペースを有しながらも3台に留める院内設計とした。その理由は、マイクロスコープの理想的な配置にこだわった結果であるが、患者誘導路とアシスタントスペースの確保の2つの観点からも今回の選択を後押しした。チェアの台数を制限することに抵抗がなかったわけではないが、最適な台数は医院のコンセプトによって変わるものである。その点当院では、開業当初より「自由診療の割合を高くしたい」という明確なコンセプトがあった。導入したマイクロスコープ臨床に活かせていますか?歯科医院経営二極化の要因その①「環境」マイクロスコープ診療は使い倒してこそ輝く!
元のページ ../index.html#20