デンタルアドクロニクル 2025
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デジタル歯科最前線! ~これからの歯科医院のデジタル活用~  巻頭特集119した不適冠などはほとんどが筆者の自費診療へと移行する。見せることは嘘偽りがない証明として相当の信頼を得られるのだと感じる。 また、この魅力を感じた歯科衛生士はマイクロスコープがないと診療できないと感じるまで手になじむようだ。これは、離職防止にも一躍買うだろう。現在、うれしいことに数多くの歯科衛生士から入職希望をいただいており、マイクロスコープを長く使用したい、また、基礎から学びたいという理由だそうだ(図3)。前述した環境的要因また技術的な要因をクリアし、歯科衛生士にも専用のマイクロスコープを与えることのハードルは低くないが、多くのメリットがあると考える。 これらを確実に実行することによりさまざまなメリットが生まれる。まず、患者さんのメリットは満足度の高い状態を維持できることであり、トラブルになることはほとんどない。デメリットは保険診療と比較して治療費が高額になることだと思うが、長い目で見れば精密に治療された歯の予後は良好であり、リターンに見合う投資ではないだろうか。 医院側のメリットとしては、自費診療の契約が理想的に決まっていくことだ。このように、マイクロスコープは最強のコミュニケーションツールと確信している。繰り返しになるがマイクロスコープの導入に「中途半端」は禁物である。ぜひ、本気で導入を検討していただきたい。ん1人ひとりに対する診療時間を確保すれば経営を圧迫することはいうまでもない。あわせてアシスタントを1人固定で配置すればそれだけ人件費もかさむため、肝心の患者さんから単価の高い治療(自由診療)が選択されない場合には目も当てられない。 このような想像から、マイクロスコープを導入してもどっちつかずな診療スタイルであることが自由診療の割合が増えない理由ではないだろうか。「中途半端」な診療がすべての元凶であろう。診療時間のコントロール マイクロスコープを導入すると多くの情報が目に入るため、診療時間を超過しがちである。計画的に診療時間をコントロールできなければ経営は安定しない。たとえば当院の根管治療では、ほとんどのケースにおいて来院回数は2回で1回60分、つまり計120分で根管治療は完了する。イニシャルトリートメントだけでなくリトリートメントもこの時間に含まれる。 自身のセミナーでも、受講者に1回の根管治療にかけている時間と回数を質問したことがあるが、データを取っている方はほとんどいなかった。現状かかっている治療回数と時間を把握し、目標を明確に設定することがマイクロスコープを有効活用する第一歩となる。スタッフのアシストと機種選択 当院で外科的歯内療法を行う際には、特定の歯科衛生士や歯科助手をアシストに付けている。そのため筆者は、ほとんどマイクロスコープから目を離すことなく治療が行えている。また、マイクロスコープの機種もフットコントローラーが付いているタイプを選択すればマイクロスコープから目を離す時間は最小限で済む。マイクロスコープからいかに目を離さずに治療できるかを追求することで、治療時間は最適化できる。 歯科衛生士のマイクロスコープ使用の是非に関して、当院の事例を取り上げながら述べたい。当院では3台のチェアに対して2台のマイクロスコープを設置している。1台は筆者の治療用で、もう1台は故障時などのリスク回避目的で設置していた。このマイクロスコープは歯科衛生士専用として与え、新卒の歯科衛生士には、「習うより慣れろ」の精神で半ば強制的に使わせながら指導した。すると、マイクロスコープで映し出した画像の説明は口頭での説明と比較して吸収速度がまったく異なることをすぐに実感できた。 「成功体験」を多く積ませることで自然とマイクロスコープを使う頻度は増えてくる。上達もきわめて早い。投資効果については、自費でのメインテナンスでなければ直接的な利益は少ないとは思うが、間接的な利益は計り知れない。まず当院において、歯科衛生士枠でのキャンセルはほぼない。また、歯科衛生士がマイクロスコープ下で示図1 当院のマイクロスコープの配置。図2 動画を見せながらの説明は患者さんの理解が得られやすい。図3 マイクロスコープ下でのDHワークの様子。DH専用のマイクロスコープスキルアップや人材確保など効果大術者と患者さんの双方がwin-winであるために歯科医院経営二極化の要因その②「技術」

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