デンタルアドクロニクル 2025
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Quint DENTAL AD Chronicle 202536【歯科技工士紹介】石川航生 Kouki Ishikawaやまざき歯科医院今後のデジタルデンチャーの主流はプリントデンチャー!プリントデンチャーのメリットを教えてください製作できることは、歯科医師・歯科技工士・患者さん、全員にとって大きなメリットになると思っています。 また、これはスタッフから指摘されて気づいたのですが、デジタルデンチャーを製作するようになってから、口腔内での調整量が半分程度に減ったのです。これは、高い精度で採得された印象やバイトを、そのまま完璧に再現してくれるデジタルの恩恵だと思います。効率化という意味でも、非常に良いことだと思いますね。 そのデジタルデンチャーの製作方法としては、ミリングで製作するミルドデンチャーと、3Dプリンターで製作するプリントデンチャーの2つに大別することができます。もちろん、ミルドデンチャーとプリントデンチャーそれぞれにメリットとデメリットがあるのですが、これから主流になっていくのは明らかにプリントデンチャーだろうと考えています。 その理由として大きいのは、やはりコスト面ですね。デンチャーのミリングが可能なミリングマシンには約1,500~1,700万円の導入費がかかるのと比較して、3Dプリンターならば300万円台で導入できます。さらに、初期投資だけではなく、先ほどお話ししたように、材料費も3Dプリンターは10分の1のコストで製作できるのです。 これらのコストは患者さんへのチャージに反映されます。やまざき歯科医院の場合、ミルドデンチャーはプリントデンチャーの約4倍でチャージしていますので、その金額を考えると患者さんが選びやすいのはプリントデンチャーだろうと感じています。石川:審美面で言えば、現状ではミルドデンチャーが有利だと思います。ただ、山崎先生がおっしゃっているように、圧倒的にコストが安いことに加えて、製作時間もプリントデンチャーに大きなアドバンテージがあります。ミリングですと1床の加工に3時間程度かかかるのが、3Dプリンターなら複数の床を同時に2時間程度でプリン山崎:まず、デジタルデンチャー自体のメリットとして、石膏模型が不要なことが挙げられます。石膏模型を製作するだけでも2時間程度かかっていたのが、デジタルであればシリコーン印象をスキャンしてCADソフトウェアで簡単な処理をすれば、15分程度でデジタル上に模型が再現できてしまいます。 そこからCADソフトウェアでデザインを行うわけですが、この工程には当然トレーニングが必要になるものの、その習熟スピードはアナログでトレーニングするよりも、はるかに速いです。石川:私は、歯科技工士専門学校を卒業後、すぐにやまざき歯科医院に就職しました。学生時代は従来法しか学んでこなかったので、デジタルを扱い始めたのは就職してからになります。正直なところ最初は不安があったのですが、1ヵ月くらい練習した段階で、「これなら自分にもできるかもしれない」という印象をもちました。山崎:デジタルを駆使すれば、専門学校を卒業してすぐの段階でも、70点くらいのデンチャーを製作することが可能だと思います。もちろんそれで完璧なわけではないですが、最初の足がかりとしてデジタルから入ることで、歯科技工士のラーニングカーブもスムーズになるのではないかと思っています。 あとは、トライインデンチャーをレジンで製作することができるので、患者さんに実際にお使いいただけることもメリットです。従来のトライインデンチャーはワックスなので飲食時に使用することができず、ご家庭にお持ち帰りいただくわけにはいきませんでした。患者さんはチェアに座っている15分程度で、トライインデンチャーが最終義歯として使用できるどうかを判断しなければいけなかったですし、それは歯科医師も同様なのでプレッシャーを感じていました。実際に、トライインデンチャーの段階では満足していたのに、最終義歯を装着後、次の来院時に「こんなものは使えない」と言われてしまった経験もあります。 これを避けるために、レジン製のトライインデンチャーを患者さんにお持ち帰りいただき、実際にご飯を食べ、審美面での家族の反応も聞いていただいたうえで、最終義歯として使用できるのかを判断していただくことができます。さらに、仮にそこから修正が必要になった場合でも、従来法ならそのデンチャーを削って人工歯を外し、再度排列して……、という作業が必要でしたが、デジタルデンチャーの場合、CADソフトウェア上で修正できるために作業が非常に容易です。ですから試行回数を増やすこともできますし、その結果、歯科医師と患者さんの信頼関係が十分高まった状態で最終義歯をQ2

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