デンタルアドクロニクル 2025
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株式会社モリタ × 山崎史晃×石川航生  巻頭特集2デジタルの活用が今後の補綴治療と歯科技工士減少問題対策の鍵となる!最後に、今後の3Dプリンターとデジタルデンティストリーへの期待をお聞かせくださいば失敗しようがありません。他の3Dプリンターですと、パラメーターやサポートピンの太さ・本数を自分で探らなければいけないですし、3Dプリンター自体のキャリブレーションも必要ですから。それらをすべて自動で行ってくれるアキュプリント3D 4.0プロは、経験に左右されずにだれが使用しても失敗が非常に少ないのではないかと思います。 あとは造形時間ですね。精度を求めながらも、もちろん造形時間が短いほうが良いですから。山崎:義歯を倒してプリントする設定にすれば、高さが少ない分、短時間でプリントできるのですが、やまざき歯科医院では精度を向上させるために義歯を立ててプリントする設定にしているのです。ですから、義歯を倒す設定と比較して、プリント時間はおそらく2倍程度かかっているのですが、それでも義歯床だけなら1時間程度でプリント可能です。これは、他の3Dプリンターよりもかなり速いと思います。 造形時間が短いのは、カーラプリント3D 4.0の405nmの波長から、アキュプリント3D 4.0プロになってより強い385nmの波長を使用するようになったことも要因だと思います。同時に、385nmの波長を使用することで、プリントされた造形物の強度も上がりました。これは、405nmと385nmの両方の波長で造形し、なおかつ熱処理を加えることで徹底した完全重合を行っているからだそうです。実際、アキュプリント3D 4.0プロを使用するようになって、同じ材料をプリントしているのに、著しく破折が減りました。学会などで何度か「プリントデンチャーは割れる」という報告を見たことがあるのですが、405nmの波長の3Dプリンターを使用していることが多かったので、破折に関しては、385nmの波長を使用しているアキュプリント3D 4.0プロとは区別して考えていただければ良いのではないかと思います。 あとは、アキュプリント3D 4.0プ石川:プリントデンチャー以外では、矯正歯科治療用のマテリアルに期待しています。山崎:海外では販売されているようなので、日本でも使えるようになれば良いですね。 また、Teeth & Tempが販売されたことによって、今後は保険治療のCAD/CAM冠用の樹脂インクも期待できるのではないかと思います。Teeth & Tempの材料費は1歯あたり60円で、1ブロック3~4千円のCAD/CAD冠用ブロックから大幅にコストダウンが可能になります。しかも、それで強度や審美性も遜色なく、製作時間も短縮できて、初期投資のコストも大幅に安価なわけですからね。 デジタルデンティストリー全体の話では、現状、日本はもとより世界中で歯科技工士が不足してきています。日本の歯科技工士専門学校も閉校や定員割れが続き、卒業しても数年で多くが離職してしまう。石川:卒後5年以内で8割が離職しているという話も聞きます。山崎:そんな状況で、歯科技工所はクオリティも求められる。そうなると、デジタルデンティストリーに頼らざるを得ないと思うのです。今後、補綴治療のクオリティと歯科技工士のワークライフバランスを両立していくためには、デジタルデンティストリーを活用することが非常に重要になっていくと思いますし、そのなかでアキュプリント3D 4.0プロのような3Dプリンターも大きな役割を担うのではないでしょうか。          (了)ロで製作するプリントデンチャーの人工歯と床を一体化させるとき、他社のシステムのように接着材を使用するのではなく、床用の樹脂インクを使って非常に強固に一体化できるのも良い点だと思います。これまで、樹脂インクを使用して一体化した後に床から人工歯が外れた経験は1度もありませんし、接着材の材料費のコストカットという面でもプラスの要素になります。 さらに、三井化学という化学メーカーのバックアップがあるので、今後も高いクオリティをもった3Dプリント用のさまざまな樹脂インクの開発・販売が期待できることも、アキュプリント3D 4.0プロをお勧めできる大きな理由のひとつですね。山崎:プリントデンチャーに関しては、インプラントオーバーデンチャーや磁性アタッチメントなどに対して使用しても割れにくい樹脂インクが販売されることを期待しています。 もうひとつは、3Dプリントによるパーシャルデンチャーの製作ですね。海外の歯科医師と連絡をとっていると、さまざまな手段を試しているようですが、メタルフレームとプリントデンチャーをどう絡めていくのかは今後の課題だと思います。39Q5

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