デジタル歯科最前線! ~これからの歯科医院のデジタル活用~ 巻頭特集1ab7デジタル化が進むことが容易に想像できます。ただし、歯科診療にはデジタル化で補えないアナログの要素が存在し、とくに患者さん1人ひとりに適した治療計画の立案はデジタル化でカバーできるとは思いません。 また、現在では歯科におけるさまざまなウェブセミナーを簡単に受講できる時代になりました。手軽に学べることは良いことですが、受講しただけで満足せずに、そこで得た知識をどれだけ臨床に落とし込めるかが重要となります。 われわれ歯科医療従事者の仕事は、患者さんの生活を豊かにすることです。その本質を忘れなければ、デジタル化によってさらに質の高い治療が提供できると信じています。レスによる修復物製作が主流になると考えられますが、そうなればなおさらです。すなわち、歯科医師の治療技術が低ければ、アナログの時よりも修復物の品質が落ちてしまうという、本末転倒なことになってしまうのです。 また、印象採得や治療計画等の補綴装置製作に関する情報を歯科技工士へデジタルで簡単に送れるようになった一方で、対面や電話といった双方向の情報のコミュニケーションが希薄になっていることも気がかりです。ただ今はZoomなど、顔の見える双方向のデジタルコミュニケーションツールもあって、これらを駆使すれば遠方の歯科技工士とも以前よりも密なコミュニケーションが可能かもしれませんね。荻野:歯科診療では、これからさらに図3 myDentalを通して染め出しの写真を患者さんと共有できる。図4a、b 支台歯形成の良い例(a)と悪い例(b)。a:全周の滑らかなマージンを確認でき、窩洞形態もシンプルなものとなっている。窩洞外形が複雑な場合、スキャンするには困難になることが多いので、できるだけシンプルな形成を心がけることが重要である。b:窩洞外形が複雑になっているため、スキャンのみならず、ミリングの工程においてもエラーが生じやすく、適合精度が低下しやすくなる。また、ミリング後に模型上で調整できない模型レスの場合は、さらに適合精度が低下しやすい。デジタル時代に伝えたいことデジタルツールを活用したからといってすべてがうまくいくわけではないちそうですね。荻野:その通りです。ただ、myDentalはそういったリマインド機能だけではなく、メインテナンス時に下がりがちな患者さんのモチベーションの維持にも、今まで以上の効果がありました。 というのは、今まで私の歯科医院ではPCRスコアの情報を印刷し、患者さんに紙で渡していましたが、これはスタッフにとっては煩雑で、患者さんにはすぐに捨てられてしまったり、なくされてしまうなど、その効果は限定的でした。 myDentalには、PCRスコアはもちろん、口腔内写真やデンタルエックス線写真、IOS(口腔内スキャナ)でスキャンした画像、診療時に測ったポケットの数値など、多くの情報を患者さんに提供できます。PCRスコアに関していえば、とくに染め出し後の口腔内写真を提供することは大きなインパクトがあるようで、ゲーム感覚でブラッシングをがんばることができ、その上達を確かめるべく次のメインテナンスを楽しみに来院してくれる患者さんが増えました(図3)。――今後さらに歯科医院全体のデジタル化は進むかと思われますが、その際に歯科医師が考えなくてはならないことは何でしょうか?荻野:デジタル化で効率化を図る一方で、治療の技術研鑽を怠ってはならないということです。たとえば、間接法の修復治療に関していえば、今までは歯科医師の支台歯形成や印象採得の技術が多少低くても、歯科技工士が石膏模型上で調整することで適合精度等、その品質が担保されていた側面がありました。 しかし、デジタルはそういった歯科医師の技術不足を許容してくれず、それによるエラーは修復物の品質低下に直結します(図4)。今後IOSでの模型
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