ema denticola新年の学び始め応援企画歯周病菌データベース2025(文献3より一部改変)P. gingivalisPorphyromonas(名字) gingivalis(名前) gingivalis歯科大・石原和幸教授のご厚意による)歯周病とのかかわり●Keystone病原菌(要となる悪玉菌)データベースを見る前におさえておきたい項目ここで紹介する内容を知っているかどうかで、データベースの理解度がまったく変わります!省略コレラ菌、腸炎ビブリオカンピロバクター、ヘリコバクター、ピロリ菌短桿状通性嫌気性菌酸素(空気)があっても生育できる細菌肺炎連鎖球菌、淋菌、髄膜炎菌ミュータンス連鎖球菌連鎖状配列新年の学び始め応援企画歯周病菌データベース2025図4 嫌気性菌/好気性必ずチェックしておきましょう。 細菌の学名はラテン語で、イタリック体で表されます。人間と同じように名字(属名)と名前(種名)で構成されており、名字は省略できます。たとえば、Streptococcus(名字) mutans(名前) はS. mutansとなります。Red Complexが起こったりする。血を阻害する。くなります。●タンパク質分解性炎症反応の亢進歯周組織には免疫活性を上げて炎症を亢進するレセプターがある。このレセプターは簡単には発動しないように、スイッチは非常扉のドアのようにタンパク質の鎖で封印されている。ジンジパインはその鎖を分解して過剰な炎症を誘導し、歯周1No.P.35、5嫌気性/好気性 細菌には嫌気性と好気性という分け方があります(図4)。嫌気性菌とは生育に酸素(空気)を必要としない細菌で、今回ご紹介する歯周病菌(歯肉縁下プラークの細菌)はこちらに該当します。ちなみに、歯肉縁上プラークの細菌の多くは生育に酸素(空気)を利用する好気性菌です。 嫌気性菌のうち、偏性嫌気性菌とは酸素(空気)のある環境では生育できない細菌、通性嫌気性菌とは酸素(空気)があっても生育できる細菌のことです。学名グラム陽性/グラム陰性 紫色素液によって細菌を染色した後、95%エタノールで脱色する染色方法をグラム染色といいます。脱色後も紫に染まったままの菌をグラム陽性、脱色される菌をグラム陰性といいます。グラム陽性菌は細菌壁が分厚く脱色されにくいですが、グラム陰性菌の細菌壁は薄く脆いので脱色されることによります。細胞壁の構造の違いは、生物学的に大きく違うことを意味しています。細胞壁が壊れやすいと、内毒素や抗原が外部に露出するため、一般にグラム陰性菌のほうが病原性は高いです。今回ご紹介する歯周病菌(歯肉縁下プラークの細菌)はいずれもグラム陰性菌です。運動性 みずから動くことができる運動性細菌は、食糧やすみかを探すうえで非常に有利なので、感染しやすい細菌なのです。Td菌はべん毛という長い毛のようなものを使って、自由自在に泳ぐことができます。運動性桿菌であるCapnocytophaga属やSerratia属はべん毛はもちませんが、からだをくねらせて滑走運動をします。一方、Pg菌とTf菌に運動性はありません。ボスなので、ちょこちょこ動き回る必要はないからなのでしょう。最恐の歯周病菌名前の由来P024-036_DH01_toku1.indd 26Streptococcus(名字) mutans(名前)(文献1より転載)January 2025 vol.49stration:寺田久美January 2025 vol.49図3 細菌の形態基本的形態球状菌桿状菌らせん菌262024/12/11 14:49特徴双球状主な菌腫不規則ブドウ球菌細長い桿状多くの桿菌、Tf菌、Fn菌連鎖桿状Pg菌、Aa菌、Pi菌柵状配列炭疽菌ジフテリア菌コンマ状らせん状長いらせん状スピロヘータ、Td菌ム(新潟大学医歯学総による)。. denticolaT. forsythiaP.32省略2024/12/11 14:49P024-036_DH01_toku1.indd 27P.27運動性P.27 porphyra(紫色)は、血液やヘモグロビンに関連した色を指すギリシャ語。この細菌属は、血液やヘム化合物(鉄を含む化合物)を好むためです。monasは細菌を指す用語。gingivalisは歯肉(gingiva)に住むことに由来。黒い歯肉縁下歯石黒い歯肉縁下歯石にはPg菌がいるという誤った情報が広がっています。バイオフィルム中のPg菌の数は1%以下なので4歯石を黒くすることはできません。歯肉縁下歯石が黒いのは、血液中の赤血球ヘモグロビンの鉄の色です。●非糖分解性 糖質(砂糖、ブドウ糖、炭水化物など)を分解できないので、栄養素として利用できません。●運動性はない型の歯周病に関与します。●毒性因子 歯周病細菌の中でも随一を誇る多くの毒性因子を その中でもとくに重要なのがジンジパイン(タンパク質分解酵素)と線毛(付着/結合因子)です。もっています。●ジンジパイン タンパク質はアミノ酸が鎖状につながってできています。このタンパク質の鎖を切って、短いタンパク質(ペプチドという)にすることをタンパク分解とい2024/12/11 14:49P024-036_DH01_toku1.indd 29January 2025 vol.492024/12/11 14:49292024/12/11 14:49APPE_P024-036_DH01_toku1.p3.pdf特徴APPE_P024-036_DH01_toku1.p4.pdf偏性嫌気性菌酸素(空気)のある環境では生育できない細菌図5 ジンジパインの歯周病への影響歯周組織を構成するタンパク質の分解コラーゲンなど歯周組織のタンパク質を分解することで、歯周組織が破壊され、歯周ポケットが深くなったり、歯肉退縮歯周ポケットの止血阻害鉄分と良質なタンパク質を含む血液はPg菌にとって最高の食料。歯周ポケットからの出血が止まったら一大事。そうならないように、出血を止める宿主タンパク質を分解して、止免疫系タンパク質の分解Pg菌を排除しようとする免疫成分(抗体、補体、サイトカインなど)もタンパク質で構成されているため、それを分解することで、宿敵を減らし、Pg菌は自分の身を守っている。また、骨吸収を防いでいるタンパク質も分解し、骨吸収を促進栄養素の獲得タンパク質を分解し、ペプチドを得ることで、Pg菌の栄養嫌気性菌生育に酸素(空気)を必要としない細菌好気性菌生育に酸素(空気)を利用する細菌学名P.26形態P.26嫌気性P.27グラム陰性(P. gingivalis、通称Pg菌)●短桿菌、0.8μm程度●歯周病原性:最恐●偏性嫌気性グラム陰性桿菌●黒色色素産生性 生育には鉄が必須。鉄分を摂取するため、菌体が黒 歯周組織や血液のタンパク質を分解して栄養素にします。Pg菌は肉食系です。 タンパク質を分解するために、強力なタンパク質分解酵素やコラーゲン分解酵素をもっています。 歯周病菌界のリーダー。オーケストラの指揮者と呼ばれています。Pg菌がいるとバイオフィルム全体の病原性が高まります。 Pg菌は指揮者なので、わずかな菌数でも影響力を発揮できます。通常は、重度歯周病患者でもバイオフィルム中の菌数はわずか1%以下ですが4操って歯周病を進行させます。しかし、歯周炎の急性発作時にはPg菌の割合は大幅に増えて、5%を超えるそうです(アムステルダム歯科アカデミックセンター van Winkelhoff教授談)。 慢性歯周炎はもちろん、侵襲性歯周炎などすべての、他の菌種を28P024-036_DH01_toku1.indd 282527います。これを行うのがタンパク分解酵素です。 私たちの体は骨とタンパク質でできています。歯周組織もタンパク質でできています。歯周組織を守る免疫系もタンパク質成分で構成されています。歯周組織の炎症の制御機構や歯周ポケットの止血機構もタンパク質の分子から成っています。 タンパク質は歯周組織の基盤をなすかけがえのない成分なのです。こともあろうに、ジンジパインはこのタンパク質を分解するのです。その結果、ジンジパインはさまざまな悪影響を与えます(図5)。 ミュータンスレンサ球菌はショ糖、果糖、ブドウ糖などの糖を分解して栄養素とします。しかし、Pg菌は糖を分解できないので、糖には見向きもしません(Pg菌はデンプン嫌い)。代わりに、タンパク質を分解して栄養源にします(Pg菌は肉食系)。強力なタンパク分解酵素であるジンジパインはこの栄養摂取に欠かせません(図5)。病を進行させる。する。素とする。otella intermedia.p2.pdf形態 細菌にはさまざまな形態があります(図3)。今回ご紹介する歯周病菌は桿状菌やらせん菌に該当し、長さもそれぞれ異なります。S. mutans「桿菌」「嫌気性菌」「グラム陰性菌」「運動性」など、データベースで出てくる用語の意味もまとめているので理解しやすいです!Pg菌をはじめ、Tf菌、Td菌、Fn菌、APPE_P024-036_DH01_toku1.p5.pdfAa菌、Pi菌の特徴や最新情報が満載。APPE_P024-036_DH01_toku1.p6.pdf“差がつく”知識が身につきます!3つの菌Porphyromonas gingivalis『歯科衛生士』ダイジェスト見本誌2025
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