ザ・クインテッセンス ダイジェスト見本誌2025
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*Professor, Louisiana State University Health Science Center, School of Dentistry, Department of Diagnostic 3QA新v新3 *京都府開業 髙屋歯科医院連絡先:〒622‐0013 京都府南丹市園部町本町22 口唇粘液嚢胞は,日常の歯科臨床において遭遇する頻度の高い口腔軟組織疾患の1つであり,粘膜下の小唾液腺に関連して生じ,下唇に好発する.その摘出に際しては,解剖学的知識を備えたうえで,切開,剥離,縫合を含め そこで本稿では,口唇粘液嚢胞摘出術を安心かつ安全に行うための基本的た手術の勘どころを押さえておく必要がある.な術式や手術手技のポイントを実際の動画を用いて解説する.97スマホ動画で学ぶ !精度を上げる治療手技97口唇粘液嚢胞摘出術を安心,安全に7行うための勘どころ松原良太熊本県開業 まつばら歯科口腔外科こども歯科連絡先:〒865‐0058 熊本県玉名市六田29‐4the Quintessence. Vol.44 No.1/2025̶0003Noncarious Cervical Lesion黒江敏史そのため,詳しい人は「あれはどうなっている?」と感じるところがあったかもしれない.書籍に収載できなかった,より踏み込んだ内容を連載で紹介して 2024年9月にクインテッセンス出版から『なぜいく.起きる? どう対応する? 非う蝕性歯頸部歯質欠損 NCCL』(以下,NCCL本)を発刊することができた.NCCLは筆者が歯科医師となって2年目から約30年間追いかけ続けてきたトピックであり,ある意味現時点での筆者の集大成といえる書籍である. 読者の目には,筆者が筋金入りのアブフラクショ1991年にアブフラクションが提唱されNCCLの病因ン否定論者に映っているかもしれない.しかし,ア論が大きく変化してから,アカデミアがアブフラクブフラクションを否定的に考えるようになったのは,ションに否定的になった現在までの変遷を網羅して2016年頃で比較的最近のことである.アブフラクいる. 筆者自身のNCCLとアブフラクションに関する考ションを知ったのが1994年であるため,肯定派として過ごした時間のほうがより長い.アブフラクションを実証するために留学し,アブフラクションに肯え方も,この30年で大きく変化した.その変化の科学的,臨床的根拠をまとめたのが,このNCCL本で定的な論文や雑誌の特集を書いてきた,アクティブある.結果として,過去の自分自身の主張をほぼなアブフラクションの信奉者であった.180°覆すことになったが,その過程は簡単ではな アブフラクションを知るきっかけとなったのかった.何度も文献と症例を見直し,熟考と自問自は,the Quintessence 1994年4月号の論文(図1)1答を繰り返した結果である.で,大学補綴科研修医2年目のことだった.それま 蓄積した根拠は膨大で,書籍に収載できなかったで習っていたことと大きく異なり,咬合へ新たな意ものも多かった.初学者も対象とした書籍であった味を与える説に衝撃を受けて,のめり込んでいっため,マニアックな内容は割愛せざるを得なかった.た.アブフラクションという言葉とはこれが初遭遇新連載142APPE_p142-147_TQ01_NCCL.p1.pdf実践から学ぶ成長のストーリー髙屋 翔*/馬場 聡/園延昌志/猪原 健/穴沢有沙 皆さん,はじめまして,私たちは「Dent-Biz Asso-「いのはら先生」「そのべ先生」「ばば先生」「あなざciation(DBA)」といいます.DBAは,経営学修士課わ先生」といった頼れる先輩たちが登場します.ス程を卒業した歯科医師が運営している団体です.メトーリーでは,医院の経営を軌道に乗せていく過程ンバーはそれぞれが講演活動,執筆活動,歯科医院でよく直面する課題やトラブルを取り上げ,それらの経営相談,企業へのコンサルティングなど,多岐を経営学理論に基づいて解説していきます.具体的にわたる活動を行っています.私たちはこうした活なケーススタディを通じて,日々の経営に生かせる動を通じて歯科医院の経営実態を把握し,これまでヒントを提供できるよう工夫を凝らしました.見えてこなかった課題や解決策を見出してきました. さて,たかや先生は,はたしてどのようにして医そして,それらの知見をもっとわかりやすい形で,院を軌道に乗せていくのか.その成長の過程を,ぜ歯科医師の皆さんにお伝えすることができないかとひ皆さんも一緒に楽しんでいただければ幸いです.模索してきました.そのようななか,このような連私たちは,背伸びをせず等身大の新人経営者の姿を載の機会を得たことをとても嬉しく思っています.描きながら,読者の皆さんが「経営」を身近に感じら 歯科医院経営は,臨床と密接に関係しています.れるよう努めていきます.たかや先生の成長を楽し経営が円滑に行われてこそ,患者さんに提供する良みに,全12回の連載にお付き合いください.質な臨床が可能となります.私たちは,皆さんが「自分が実現したい医療」を実現するために,少しでもお役に立ちたいと思っています.今回の連載では,「経営」という取っ付きにくいテーマを,より親しみやすくお届けするために,漫画やイラストを多く取り入れました.これにより,読者の皆さんがより深く,そして楽しく経営学の本質を学んでいただけることを期待しています.たかや先生開業したて.慣れない医院経営に奮闘中. 物語の中心は,開業したての若手歯科医師「たかや先生」です.彼をサポートするメンターとして,APPE_p149-155_TQ01_michi.p1.pdf 本欄は,本年8月号より4回にわたり,Dr. Charles S. Greeneとその共同研究者らによる論文群を順次,翻訳掲載していくものである.Dr. Greeneは,イリノイ大学シカゴ校歯学部において顎関節症と口腔顔面痛分野のディレクターを長年にわたり務め,米国口腔顔面痛学会のブレインとしても知られた,国際的なTMD研究の第一人者である.本稿掲載の意図は,本年8月号掲載のDr. Greeneから本誌に寄せられた「本シリーズの目的」をご参照いただきたい.(編集部)Science, New Orleans, LA, USA*1Adjunct Associate Professor, University of Illinois at Chicago, College of Dentistry, Department of Oral Medicine, Chicago, IL, USA*2Professor and Chair, University of Pittsburgh, Department of Dental Public Health, Pittsburgh, PA, USA*3Clinical Professor Emeritus, University of Illinois at Chicago, College of Dentistry, Department of Orthodontics, Quotes From : Quintessence InternationalOriginal Title : Temporomandibular disorders : current status of research, education, policies, and its impact on clinicians in the United States of AmericaVOLUME 54, NUMBER 4, 2023©Quintessence Publishing Company Inc.Chicago, IL, USA1712024/10/08 10:06the Quintessence. Vol.43 No.9/2024̶19402024/08/09 14:39慶應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室連絡先:〒160‐8582 東京都新宿区信濃町35the Quintessence. Vol.44 No.1/2025̶01582024/12/10 11:58東京都開業 BOSTON矯正歯科長尾紀代子の相互作用の相違を理解するのに,論文の要旨はじめに空間情報とイメージングツールの発展が貢献している. コンピュータ,AIの進歩により,計算顕微鏡法とシーケンス解複雑な生物学的現象の研究や新しい析の最新進歩実験的アプローチの開発への多分野 画像データは,意味のあるものにのサイエンティストの参加が増加すするためには定量化する必要がある.る傾向が続いている.これは,計算複雑な画像データを利用可能にする生物学という分野である.計算生物ために,新しい処理ツールに対する学の歴史は,1842年に発生生物学に需要が高まっている.新しい画像処おいて成長と形態に関する数学的ア理ツールによって反復タスクの自動プローチによる予測モデルが開発さ化と大規模なデータセットの統合がれたことに端を発する.モデル作成可能になり,頑健な予測が可能とには最近まで高品質のデータが不足なった.していたが,新しい実験技術の開発, ディープラーニングをはじめとコンピューティングリソースによりする手法は,「教師あり学習」と「教問題は解決されつつある.口腔およ師なし学習」に分類される.教師あび頭蓋顔面生物学の分野にも計算生物学が適用でき,頭蓋顔面の発達,り学習では,大量の実験データでトレーニングデータセットを構築する.疾患重症度の分類,治療結果の予測に,すでに画像解析とゲノム解析が教師なし学習では,新しい入力データに対し予測を出力させる.教師あ使用されている.り学習でトレーニングされた数理モ 本論文では,新しい計算ツールをデルを適用する場合もある.教師なゲノミクス分析の最近の進歩を紹介する.さらに,これらのツールからスで一般的に使用される分類手法であるクラスタリングとパラメータを使用したバイオイメージ分析,空間し学習の例では,単一細胞ゲノミク恩恵を受けている臓器の発達・疾患のモデル化と臨床応用を紹介する.細胞が周囲の環境によって受ける影統合する次元削減がある.人間の入力を最小限に抑えるトレーニング済みアルゴリズムを構築することが,響や恒常状態と疾患状態での細胞間とくに重要である.APPE_p168-170_TQ01_FIJ_nomura.p1.pdf久木田 大Reconsider the Management of Cracked Tooth:Strategic Restoration to Presere TeethDai Kukitaキーワード:クラックトゥース,スプリットトゥース,歯のたわみ 今後の歯科医療では,病態の解明や技術,医療機器などの進歩により,う蝕や歯周病などのさらなる疾患抑制が可能となり,結果として歯を保存できる確率が向上することが期待されている. しかし,より歯の保存が可能になるということは,人びとの長寿命化と相まって歯が口腔内に存在する期間が長くなるため,“歯の破折”という問題の増加が懸念される.Axelssonらの研究1によれば,徹底的なう蝕や歯周病の予防によって抜歯が減少した場合,主な抜歯原因は“垂直性歯根破折(VRF)”になることが指摘されている(図1). 実際に筆者は,日常臨床において垂直性歯根破折に数多く直面している.さらに歯の破折に関する病態であるクラックトゥースやスプリットトゥースに直面することも少なくない.また,現在の修復治療の技術に目を向けてみると,歯質を可能な限り温存し,なるべく削らない治療が推奨されているのを多く目にする.もちろん修復治療において,なるべく116患者の背景を踏まえて治療にこだわる若手Dr. にご登場いただく欄 臨床経験年数  2015年,東北大学歯学部卒業.慶應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室に研修医として入局し,現在も同大学病院で勤務している.日本歯周病学会(専門医),日本臨床歯周病学会,日本口腔外科学会(認定医),日本口腔インプラント学会,THREEE.,情熱会,JSCT(JIADS STUDY CLUB TOKYO)所属. 患者  66歳,女性.性格は明るく穏やかで,通院や治療に対してはたいへん協力的であった. 主訴  数か月前から右下の奥歯が揺れる,腫れるという主訴で,当院を受診した. 歯科既往歴  もともと,かかりつけの歯科医院はあったが,定■どのように検査を進め,診断したか:検査は,顔貌写真,口腔内写真(12枚法),デンタルエックス線写真,パノラマエックス線写真,歯周組織について基礎資料の採得を行った.全顎的に小臼歯,大臼歯部を中心に顕著な歯石の付着を認め,歯周ポケット158158時代をつかむトピックスLiterature Overseasに関する知識を深めることは,歯科医療全般において必要性の高いことと考えられます.はじめに 本連載は,糖尿病をもった患者さ 大学6年次の1999年,筆者は東京んに安心感をもって歯科受診をして医科歯科大学(現・東京科学大学)矯もらえるだけでなく,糖尿病にかか正科大学院を受験するも,あえなくわる他の医療従事者とのコミュニ不合格の通知を受け取った.翌2000ケーションをスムーズにできること年,母校の日大歯学部矯正科には進を目指していきます.まず,一般開業医に就職する.負けTOPICSの矯正科大学院探しとTOEFLの勉世界でも日本でも増加している糖尿病強を,新米歯科医師の仕事と並行しん気が強かったため,これより海外て始めることになる.そして2003年, 糖尿病の罹患者数は世界規模で毎ボストン大学(BU)歯学部矯正科の年増加しており,全世界で約5億人卒後プログラムへ入学を果たすことの罹患者がいると推測されており,となった(図1).世界保健機関(WHO)も警鐘を鳴ら BUの矯正科はbidimensional しています(図2).techniqueで高名なDr. Anthony  糖尿病,とくに2型糖尿病の発症Gianellyが40年にわたり主任教授は食生活や運動習慣などのライフスを務めた後,スピード歯列矯正(コルチコトミー)を併用した矯正歯科治療(accelerated osteogenic orthodontics;AOO)の研究で有名なDr. Donald Fergusonが数医科図1 糖尿病がある場合の歯周炎患者への保険算定項目.医科との診療情報共有Movie97もっと深掘り!Gary D. Klasser*/Elliot Abt*1/Robert J. Weyant*2/Charles S. Greene*3キーワード:米国歯科医師会,歯科認定委員会,歯学教育研究, 米国科学工学医学アカデミー,顎関節症 米国口腔顔面痛学会(AAOP)は,顎関節症(TMDs) 医療の多くの分野で治療法の多様性がみられるを,顎関節(TMJs),咀嚼筋,および関連するすべかもしれないが,歯科においてTMDsほど治療法のての組織を含む,筋骨格系および神経筋系の疾患群多様性がみられる分野はおそらく他にないであろと定義している1.さらに,TMDsは,口腔顔面領う.これらの介入には,受動的な(能動的に対して上域における非歯原性疼痛の主な原因であることが明下顎関係を変えない)口腔内装置,理学療法,鎮痛剤らかにされており2,3,しばしば痛みや機能障害をなどの可逆的な治療法と,能動的な(上下顎関係を変ともなう.TMDsの多くは急性で一時的なものであえるために意図的に設計された)口腔内装置,咬合調るが,長期にわたり慢性化して,重大な罹患率や生整,歯科矯正,咬合再構成,外科手術などの不可逆活の質の問題につながることもある4,5.的な治療法が含まれる.正確な診断は適切な治療を提供するための鍵であるが,TMDsの複雑さと膨大な数のために治療は複雑になる可能性がある.しか体から非難され,無力感を感じることが多く,その TMDsに苦しむ人は,家族,友人,医療関係者全結果,重大な心理社会的問題が生じる6,7.TMDsは,し,これらの問題にもかかわらず,TMDsの臨床診線維筋痛症,腰痛,過敏性腸症候群,頭痛などの他療ガイドラインは存在し,大部分の症例でエビデンの健康状態と同時に発生したり,併発したりするこスに基づいた保存的な治療の必要性を強調している.あった.2019年,米国科学工学医学アカデミー(the ともある8. 最近,TMD分野ではいくつかの前向きな進展が翻訳:井川雅子*/大久保昌和*1(*清水市立清水病院口腔外科/*1日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座,日本大学松戸歯学部付属病院口・顔・頭の痛み外来)アの現状に関する15か月間の研究を開始した.2020Medicine;NASEM)は,TMD分野の研究,教育,ケNational Academies of Sciences,Engineering,and 年には,「顎関節症:研究とケアの優先事項」9と題APPE_p171-179_TQ11_Article_ookubo.p1.pdf削らない治療は重要であり否定されるものではないが,歯を長期的に温存し機能させることを目的とするのであれば,必ずしも“削らない”=“MI(minimal intervention)治療”とならない場合もあるのではないだろうか.つまり,クラックトゥースや薄い歯質によって歯の構造の剛性低下を認める症例においては,歯質の温存と将来的な病態悪化のリスクを考慮し,戦略的に咬頭被覆や補綴修復といった治療介入の検討が必要であると考えている. そこで本稿では,歯の破折,とくにクラックトゥースに焦点を当て,病態の分類と治療の選択基準,さらに保存を選択した際の修復方法について,症例を通して述べていく.破折およびクラックを,クレーズライン,咬頭破折, AAE(American Association of Endodontists)では,クラックトゥース,スプリットトゥース,垂直性歯根破折の5つのカテゴリーに分類している2(図2).APPE_p116-128_TQ09_FOCUS_kukita.p1.pdf柴崎竣一キーワード:歯周組織再生療法,歯槽堤増大術,インプラント埋入術 診療方針 日常臨床で行う治療の内訳  歯周病専門医として,天然歯の保存を念頭に診療を行うとともに, 根管治療10%修復治療,補綴治療および根管治療に関しては,“やり直しのない修復治療20%歯周治療30%治療”を目指してマイクロスコープによる精密治療を行っている. 日々の臨床  大学病院であるため全身疾患を有する患者が多く,他科と連携しながら,歯周治療とインプラント治療を中心に行っている.補綴治療20%インプラント治療20%期的なPMTCのみで積極的な歯周病治療は行っていなかった.初診時に欠損していた7̃5は自然脱落したとのことであった. その他  時間的な余裕はあり,歯の保存をとくに望んでいた.また,機能的回復に対する意志も強く,欠損部にはインプラント治療を希望され,経済的な余裕もあるようであった.が6mm以上の部位も多く見受けられた(図1).広汎型慢性歯周炎,ステージⅣ,グレードBと診断した.■検査結果および治療計画説明時の患者の反応:患者には,歯周病の原因や病態,治療の流れを説明した.また,欠損補綴の選択肢を提示し,より機能的回復が見込めるインプラント治療を希望された.患者自身は,来院前に歯周病なのではという自覚があAPPE_p158-162_TQ01_MFS_shiba.p1.pdfEBMの時代,知っておきたいこの文献─私が感銘を受けた文献から─ 5TOPICS年間主任教授になった.筆者の在学TOPICSした2003~2006年は,ちょうどDr. GianellyからもDr. FergusonかAOO法とは?1らも教えを請うことができた幸運な AOO法とは,移動したい歯の頬時期といえるだろう.舌側に全層弁を行い,歯槽骨表面に 当時,プログラムの1年目は完全デコルチケーション(緻密骨穿孔)をにリサーチを行い,2,3年目で臨行う方法である.デコルチケーショ床に進んだ.臨床では矯正歯科治療ンにより一時的に骨に脆弱な状態の基礎的な講義,文献抄読,症例検(osteopenia phenomena)を惹起配されていて,国家試験レベルの矯可能にするものである.デコルチ正歯科の知識しかなくても半年も経ケーションの方法としては,全体的討,クリニックなどがバランス良くさせて,歯のスピーディーな動きをつと頭のなかで矯正歯科治療というに2~3mm程度の丸い傷を付けものがだんだんわかってくる(ようるdots type,歯根の周り全体をな気がした).そのような矯正歯科囲むような形で切り込みを入れてい漬けの2年間を過ごし,米国矯正くcircumscribing type,そして,歯科学会認定医試験であるAmeri-その2つを併用した方法の3つがあcan Board of Orthodonticsる(図2)2.(ABO Ⅱ)にも合格して,2006年に デコルチケーションを行った皮質帰国の途についた.骨表面に骨補填材の添加を行うこ 今回は,実際に筆者がBUでDr. とが,AOO法が従来のコルチコトFergusonとともにAOO法を用いミーと違う点である.骨補填材として矯正歯科治療を行った,思い出深い症例について解説していく.当時はDFDBA(demineralized てのレシピはさまざまあるようだが,freeze-dried bone allograft;脱灰凍結乾燥骨)とオステオグラフトを2:1に配合し,クリンダマイシンリン酸エステルを加えるものが使われていた. 手術後の矯正歯科治療については,通常のインターバルではなく2週間に1回の調整を行うことにより,骨代謝速度の亢進が起き,通常より速FROM INTERNATIONAL JOURNALS キーワード: 画像解析,バイオインフォマッテクス,ディープラーニング, 発育成長,がんPrevention/epidemiology 予防/疫学この論文,ここに注目 観察はすべての医学・生物学の中心であり,画像技術の進歩は,生体システムの複雑な仕組みをより深く理解するために不可欠である. 最近のハイスループットシーケンシングおよび画像技術により,研究者は組織や臓器内の複雑な分子変異を空間的かつ同時に処理できるようになった.また,データセットのサイズの増大により,画像データを処理するディープラーニングモデルの開発が可能になった.これらのモデルは,診断における革新的なツールとして期待されている.技術の組み合わせで個体,組織の動的,定量的,予測的な観察が可能となる. 本論文では,バイオイメージ分析,画像復元,セグメンテーション,時系列解析をはじめ,三次元空間ゲノミクスマップを可能にする新しい計算ツールについて解説されている.の発達と口腔疾患の病因の研究にどのように適用されているかが紹介ささらに,これらの進歩が,頭蓋顔面れている.本連載の趣旨:本連載では,主に卒直後から卒後数年の若手歯科医師が日頃の臨床で出会うであろう疑問点について,Q&A形式で解説していく.クエスチョンの分野は多岐にわたるため,その分野に造詣の深い“歯科医師の先輩”が各回でそれぞれ回答していく.相談者H.Hさん26歳,勤務医キーワード:デンタルエックス線写真,正常像,歯槽硬線,歯根膜腔 歯石の付着があるかどうかはもちろんのこと,とくに歯槽骨頂部の歯槽硬線や歯根膜腔,歯根周囲の骨梁の状態などに着目してみるとよいでしょう.ようになります. また歯周基本治療を行ううえで,CEJ(セメント-エナメル境)や骨欠損底からどれくらいの位置に歯石が付着しているのかを確認することにより(図2),超音波スケーラーや手用スケーラーで根面をデブライドメントする位置の指標となります.POINT2 歯槽骨頂部の歯槽硬線 デンタルエックス線写真で見られる歯槽硬線の正常像は,歯根膜腔を介して歯根と平行に0.3mm前APPE_p138-141_TQ01_STEP.p1.pdf時代をつかむトピックス糖尿病に強くなる1Diabetes水谷幸嗣東京科学大学病院歯周病科・講師医療保険改定では,糖尿病にかかわる医科歯科連携の保険点数が,医科においても歯科においても整備が進2002年東京医科歯科大学(現・東京科学大学)卒業.2006年同大学院修了(歯学博士).2010~2012み(図1),社会として対応すべき医療問題と認識されてきています. 本連載では,歯科医療従事者が年ハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病センターリサーチフェロー.日本歯周病学会専門医・指導医.“糖尿病についてもっと知っておくべきこと”を整理し,患者さんだけでなく,連携を行う医療従事者との連載にあたって:医科歯科連携に必要な知識の共有コミュニケーションをスムーズに行えることを目指していきます.トTOPICSピックスとして,糖尿病をめぐる最近の話題や,歯周病とのつながりにおいて中間的なリスクになるような 歯周病と糖尿病の関連が明らかに健康管理状態などに焦点をあてていなり,現在では,糖尿病の治療にかく予定です.かわる医科サイドからも,歯周病 糖尿病は現代社会において,罹患治療にかかわる歯科サイドからも,者が多く,身体全体(口腔を含めて)チームとして糖尿病ケアにあたるこへ影響を及ぼすことが明らかになっとが推奨されています.2024年度のている疾患です.そのため,糖尿病医療面接診療情報提供料(250)糖尿病の管理状況を確認診療情報提供書診療情報連携共有料(120)3か月に1回まで可能歯周治療歯清(72)(毎月)歯管(100)+総医(50)SPT(350)+歯周病ハイリスク患者次頁の動画へくさび状のNCCL最深部に明瞭な角があり,歯肉側壁と歯冠側壁のなす角度が鋭角なもの歯周病に罹患した患者さんのデンタルエックス線写真を撮影した際,デンタルエックス線写真のどの部分に着目し,どのように患者さんに説明すれば伝わりやすいでしょうか?回答者 中村一寿POINT1 歯石の付着 デンタルエックス線写真から歯石の付着を確認することは,PPD(プロービングポケットデプス)を測定する際の重要な情報となります. 大きな歯石が付着している場合は歯石にポケットプローブが引っかかり,正確に測定できない可能性が考えられます(図1).そのため,デンタルエックス線写真の情報から歯石を避け,ポケットプローブを入れる方向を想像すること1で,患者さんへの負担が少なく,かつ正確に歯周病の状態が確認できる138いのはら先生今回のメンター.149時代をつかむトピックスいま知っておきたい“睡眠”のこと1Sleep Medicine宮地 舞東京都開業 DENTISTRY TOKYO SINCE 1925 MIYACHI SHIKA/歯科成増デンタルクリニック(REM;rapid eye movement)と較的浅い睡眠で,ステージN3がよいう2つの主要な段階に分けられる.り深い睡眠である.ノンレム睡眠を深い眠り,レム睡 ノンレム睡眠のステージN1~3東京医科歯科大学(現・東京科学大学)歯学部歯学科卒業後,カリフォルニア大学ロサンゼルス校眠を浅い眠りと捉えることも多いが,は,睡眠中にみられる脳波の違いで実はノンレム睡眠とレム睡眠はまっ以下のように区別される1,2(図1).たく異なる役割を担っている.ステージN1口腔顔面痛・睡眠歯科医学専門医コース修了.米国口腔顔面痛学会専門医,米国睡眠歯科医学会専門医. それぞれがどのような特徴と役割 入眠前に見られたアルファ波から,をもっているかを理解することは,さらに周波数の低いシータ波に変化睡眠の質を向上させ,全身の健康をする.入眠の初期段階で筋肉の緊張TOPICS維持するために重要である.が緩む(図2).ステージN2TOPICS 紡錘波とK複合波と呼ばれる,特ノンレム睡眠(NREM)の特徴と役割はじめに:連載にあたって徴的な波が脳波に出現する.体温が下がり,心拍数が安定する. 入眠後に,まずノンレム睡眠が始ステージN3 ヒトは人生の1/3を睡眠に費やまる.ノンレム睡眠は,以前の分類 2ヘルツ以下の徐波(デルタ波)がしている.近年,睡眠に対する関心ではステージN1~4までの4段階出現する.成長ホルモンが分泌され,が高まるなか,睡眠に関するさまざに分類されていたが,最近の基準で身体の回復が促進される.最近の研まな研究が行われ,徐々にその謎がはステージN3とN4をまとめてス究では,ノンレム睡眠は記憶の固定解明されてきた.テージN3とし,3つの段階としてや整理に大きくかかわってきている 本連載では,筆者ら歯科医療従事扱われる.ステージN1とN2は比ことがわかってきた(図3).者が,患者のQOLおよび健康寿命る知識や最新情報を,わかりやすく解説していきたい.睡眠,気になるところ!を高めるために必要な睡眠にかかわTOPICS睡眠の基本構造 睡眠は,単なる身体の休息期間ではなく,脳と体のさまざまな機能が活発にはたらく複雑なプロセスである.睡眠のメカニズムとしてはじめに患者のバックグラウンド検査・診断,治療計画新連載新連載スマホで動画が見られる!2024/12/13 8:52神奈川県開業 青葉台なかむら歯科連絡先:〒227‐0055 神奈川県横浜市青葉区つつじが丘1‐142024/12/09 9:42p138-141_TQ01_STEP.indd 1382024/12/13 9:46連載アルファ波ベータ波覚醒レム睡眠N1K複合波シータ波ウェアラブル端末などの電子機器で睡眠の深さが表示される場合は,心電図,加速度センサー,脈拍数などのデータから独自のアルゴリズムで検出している場合があるN2N3ノンレム睡眠睡眠紡錘波デルタ破デルタ波5秒知りたいけど今さら聞きづらい疑問に答えます!第1回:基礎資料特別編歯の破折およびクラックの分類APPE_p003-005_TQ01_sumaho_matsubara.p1.pdf新連載NCCLう蝕以外の原因でCEJ付近に生じた歯質欠損第1回  NCCLをめぐる個人史連載開始にあたって“アブフラクション”との遭遇連載のはじめに顎関節症:米国における研究,教育,政策の現状と,臨床医への影響スピード矯正,実際の臨床p003-005_TQ01_sumaho_matsubara.indd 3山形県開業 黒江歯科医院連絡先:〒992‐0472 山形県南陽市宮内3577the Quintessence. Vol.44 No.1/2025̶0142p142-147_TQ01_NCCL.indd 142the Quintessence. Vol.44 No.1/2025̶0149p149-155_TQ01_michi.indd 149InplantlogyインプラントOrthodontics矯正Endodontics歯内療法Operative dentistry保存修復Prosthodontics補綴Periodontology歯周病Prevention/epidemiology 予防/疫学Anatomy解剖学Oral maxillofacial surgery口腔外科紹介者:梁 洪淵(鶴見大学歯学部口腔衛生学講座)/岡田彩子(鶴見大学歯学部保存修復学講座)/大塚良子(鶴見大学歯学部口腔リハビリテーション補綴学講座)/野村義明(上海理工大学 光化学・光材料研究院)James E, Caetano AJ, Sharpe PT. Computational Methods for Image Analysis in Craniofacial Development and Disease. J Dent Res. 2024 Sep 13:220345241265048.Pharmacology薬理168p168-170_TQ01_FIJ_nomura.indd 168the Quintessence. Vol.44 No.1/2025̶01382024/12/13 9:44連載ノンレム睡眠とレム睡眠の特徴と役割今イチオシの海外論文を紹介Critical Reviews in Oral Biology & MedicineComputational Methods for Image Analysis in Craniofacial Development and DiseaseE. James1, A.J. Caetano1, and P.T. Sharpe2Introductionthe Quintessence. Vol.44 No.1/2025̶0168the Quintessence. Vol.43 No.11/2024̶24712024/12/06 16:47p171-179_TQ11_Article_ookubo.indd 171熊本県開業 くきた歯科クリニック連絡先:〒862‐0909 熊本県熊本市東区湖東2‐41‐6p116-128_TQ09_FOCUS_kukita.indd 116My First Stagep158-162_TQ01_MFS_shiba.indd 158コンピュータ技術の進歩による 顎顔面の成長発育,疾患の データ解析糖尿病は予備軍含めて2,200万人1265048JDRXXX10.1177/00220345241265048Journal of Dental ResearchComputational Methods for Image Analysis in Craniofacial Development and Diseaseresearch-article2024Journal of Dental Research 1 –9© The Author(s) 2024Article reuse guidelines: sagepub.com/journals-permissionsDOI: 10.1177/00220345241265048journals.sagepub.com/home/jdrhttps://doi.org/10.1177/00220345241265048AbstractObservation is at the center of all biological sciences. Advances in imaging technologies are therefore essential to derive novel biological insights to better understand the complex workings of living systems. Recent high-throughput sequencing and imaging techniques are allowing researchers to simultaneously address complex molecular variations spatially and temporarily in tissues and organs. The availability of increasingly large dataset sizes has allowed for the evolution of robust deep learning models, designed to interrogate biomedical imaging data. These models are emerging as transformative tools in diagnostic medicine. Combined, these advances allow for dynamic, quantitative, and predictive observations of entire organisms and tissues. Here, we address 3 main tasks of bioimage analysis, image restoration, segmentation, and tracking and discuss new computational tools allowing for 3-dimensional spatial genomics maps. Finally, we demonstrate how these advances have been applied in studies of craniofacial development and oral disease pathogenesis.Keywords: spatial genomics, bioinformatics, multiomics, deep learning, advanced imaging, developmental biologySince its inception (Lovelace, 1842), computer programming has depended on biological learning. While biological systems have been an important source of inspiration in computing (Turing, 1947), perhaps more interesting is how applied numerical analysis can be used to study biological phenomena and develop novel experimental approaches. Recent years have seen a growing arrival of mathematicians, physicists, engineers, and computer scientists to the field of cell biology either to articulate sophisticated data or to model complex bio-logical mechanisms. Collaborations like these are not new; developmental biologists often from Thompson’s simple computations on growth and form (Thompson, 1917) or from Turing’s and Wolpert’s mathemati-cal approaches to patterns and positional information for the development of new predictive models. However, until recently, there was a lack of high-quality data with which to feed and train models or architectures. With the increasing development of new experimental technologies and increased computing resources, this is no longer the case. Today, compu-tational biology is a thriving field with many critical applica-tions in biomedical research (Fig. 1A–D), including the field of oral and craniofacial biology, in which imaging and genomic analyses are already being used to understand craniofacial development, classify disease severity, and predict treatment outcomes (Fig. 1E).quantification/tracking) as well as in spatial genomics analyses (multiple sample integration, cell communication, and cell tra-jectories in space). We further focus on 2 topics or biological applications that have recently benefited from advances in mechanistic thinking derived from these tools: first, organ development, and second, disease modeling and clinical prac-tice. Understanding of these areas requires knowledge of cell interactions as well as cell localization under homeostatic con-ditions and in disease. Spatial information and advances in imaging tools are therefore essential to understand how a cell is influenced by its surrounding environment and how these interactions differ in homeostatic and disease states. This review aims to serve both as an introduction to clinicians and/or scientists on current available computational methodologies inspiration take In this review, we start on recent developments that have emerged in bioimage analysis using novel computational tools (image restoration, object detection/segmentation, and object 1Centre for Oral Immunobiology and Regenerative Medicine, Barts and The London School of Medicine and Dentistry, Queen Mary University of London, London, UK2Centre for Craniofacial and Regenerative Biology, Faculty of Dentistry, Oral and Craniofacial Sciences, King’s College London, London, UKCorresponding Authors:P.T. Sharpe, Centre for Craniofacial and Regenerative Biology, Faculty of Dentistry, Oral & Craniofacial Sciences, Guy’s Hospital, Floor 27, Tower Wing, London, SE1 9RT, UK. Email: Paul.sharpe@kcl.ac.ukA.J. Caetano, Centre for Oral Immunobiology and Regenerative Medicine, Barts Centre for Squamous Cancer, Institute of Dentistry, Barts and The London School of Medicine and Dentistry, Blizard Institute, 4 Newark St, London, E1 2AT, UK. Email: a.caetano@qmul.ac.ukQuestion &Answerサッと読めて役に立つ!充実の学術コラム群動画だからわかりやすい! 大人気シリーズ欲しい知識・情報が必ずある.臨床から医院経営まで幅広くカバー!海外文献が日本語で読める幅広い情報で総合力アップ!全国の若手Dr.の臨床を知る!時代に取り残されないためのスキルと知識が満載!さまざまなテーマの論文を読み切りで不定期掲載Focus患者の背景を踏まえて治療にこだわる若手Dr. に毎月ご登場いただく欄My First StageTOPICSthe Quintessence 2025 ダイジェスト見本誌エビデンスの学びなくしては……FROM INTERNATIONAL JOURNALS海外論文の全訳を読めるのはクイントならでは !WORLD ARTICLETOPICS臨床全般歯科臨床STEP UPアドバイス歯周矯正[隔月連載中]歯科薬理歯周治療保存修復最新技術を動画で学ぶスマホ動画で学ぶ! 精度を上げる治療手技連載もっと深堀り! 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