ザ・クインテッセンス ダイジェスト見本誌2025
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Domenico Ricucci石川 亮今回の座談会のディスカッション項目る象牙質)には,細菌が豊富に存在していることが古川尊寛福西一浩世界的研究者から歯髄治癒の最新知見を学ぶ!座談会リクッチ先生と学ぶ!組織と臨床の接点福西:リクッチ先生とわれわれ5-Dジャパンは,以前(2019年3月)に座談会をさせていただき,その内容は,2回に分けてザ・クインテッセンス誌に連載しました(2019年11月号,12月号参照). 今回の座談会では,前回より5年の月日が流れ,その間,少なからず新しい研究や知見が出てきていることを受けまして,さらに深く掘り下げて議論をしたいと思います.石川:う蝕除去の方法に関してですが,日本歯科保存学会のう蝕治療ガイドライン*1では,歯質の硬さや色調を指標とし,う蝕検知液も用いて除去することを推奨しています. そこで私たちは,硬さ,色調,う蝕検知液の染色性の3つを基準に,歯質をどのように切削するかを決めています.また,深在性う蝕に対し,選択的除去を行うか非選択的除去を行うかに関して,近年,議論がなされています.リクッチ先生は,う蝕除去において,どのような基準をもたれているのでしょうか?リクッチ:う蝕除去の基準は,象牙質の色調ではなく,象牙質の硬さです.非常に鋭利なエキスカベーターを用い,除去できなくなった時点で切削を終了します.それが私の非選択的除去です. 歯髄に近接している象牙質が軟化している部分を残すことは,細菌を放置し定着させることにつながります.そして,それはやがて歯髄に炎症が波及し,歯髄壊死を引き起こす可能性があります.古川:総山先生は,象牙質を第1層と第2層に分類し,第2層は細菌感染がない部分で,無機成分は脱灰されているが再石灰化は可能であると言われています*2.健全象牙質と同様の硬さまでう蝕除去を行うと,過剰切削にはならないでしょうか?リクッチ:世界にもそのような考え方はあります.彼らは,う蝕層を区別し,う蝕感染象牙質には細菌が大量に存在し,う蝕影響象牙質には柔らかいが細菌が存在していないと考えています.しかし,これは科学的根拠に反し,単なる哲学にすぎません.細菌染色した組織学的切片を見れば明白です. 2020年に報告した選択的う蝕除去に関する,私たちの研究を紹介します(図1)*3.その研究の細菌染色法から,選択的う蝕除去により残存した“leathery dentin”(なめし革様で柔らかく弾力のある象牙質)や“firm dentin”(鋭利な手用器具を用いて切削に抵抗のあ判明しています.これらの観察結果から,細菌感染は表層象牙質にのみ存在し,変色したう蝕影響象牙質,または第三象牙質には細菌の侵入がないという長年の概念は否定されました.4the Quintessence 2025 ダイジェスト見本誌はじめに前編で掲載後編で掲載(2月号)●う蝕除去●Vital pulp therapy(VPT)●石灰化バリア●歯髄閉塞●VPTの成功基準●感染根管の根尖部拡大●難治性根尖性歯周炎●嚢胞様病変イタリア開業兵庫県開業石川歯科醫院大阪府開業ふるかわ歯科大阪府開業福西歯科クリニック特 集 1う蝕除去前編:歯髄の治癒

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