夫馬吉啓はじめに 睡眠障害を考えるときにまず押さえておきたいことは,その分類です.睡眠障害国際分類第3版これらのなかで,歯科がよく取り扱うOSAは睡眠関連呼吸障害(Sleep Disordered Breathing:SDB)に分類され,睡眠関連歯ぎしりは睡眠関連運動障害に分類されます.このように,一言で睡眠障害といってもさまざまなタイプがあり,歯科でOSAや睡眠関連歯ぎしりの装置を用いて治療したとしても,他の睡眠障害が隠れている場合があるので,一助としかなりえないという認識が必要です. それでは,睡眠障害があるとどのような影響があるのでしょうか.一般的に,睡眠障害があると質の悪い睡眠となり,睡眠休養感を得ることができず,日中の機能障害や睡眠に対する不安からの精神的影響などでさらなる睡眠障害へという悪循環に至ります.また,OSAなどを発症していると高血圧症や小児の睡眠障害に歯科はなにができる? 現在,睡眠医療の分野が世界的に活気をみせています.睡眠医療の現場において,閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA) を代表とする睡眠関連呼吸障害は小児から成人までもっとも遭遇する可能性の高い疾患です.とくに小児の場合,本人が無自覚であったり患児の保護者も疾患だと気づいていない場合も少なくありません.(ICSD-3)では,表1のように分類されています*1. 一昨年,国が示した「骨太の方針2023」には,歯科関連項目に「疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実」 が明記されており,2024年度には睡眠対策についての取り組みが明記されています.歯科を通じて全身の健康に寄与する取り組みを国は期待しており,世界的にみても歯科に睡眠医療の一助として注力することを求められています.そこで本稿では,小児におけるOSAのスクリーニングや治療,医科歯科連携などについてご紹介させていただきます.Questionnaire:CSHQ)と情緒的/行動的困難に対すSDQ)を用い,保護者からの回答によって調査した糖尿病,脳血管障害などを合併し,生存率にも影響を与えてしまう可能性のある恐ろしい疾患なのです. さらに,小児はもっと注意が必要です.小児において睡眠の質・量・リズムの3要素が整っていれば健康,発達,生活の質,脳機能が良好となり,睡眠状況も良くなる好循環が生み出されるのですが,3要素のどれかに問題がある場合,睡眠状況が悪くなって健康,発達,生活の質,脳機能の状況が悪化し,結果として睡眠の状況も悪くなるという悪循環が生み出されるとされています(図2)*2. これを証明するような論文をご紹介します.小児における睡眠障害と情緒的/行動的困難の関連性を,睡眠障害に対する問診票(Children's Sleep Habits る問診票(Strengths and Difficulties Questionnaire:報告*3によると,睡眠習慣と心理的健康との関連が確認されており,子どもたちが良好な睡眠衛生を保つために大人が注意を払い,健康的な睡眠行動に関する教育と介入を行うべきと述べられています.1)睡眠障害の国際分類2)睡眠障害が小児へもたらす悪循環8the Quintessence 2025 ダイジェスト見本誌愛知県開業 グリーンデンタル夫馬 総合歯科・口腔機能クリニック特 集 3小児の睡眠障害,何が問題か?歯科の役割を考える知っていますか?小児の睡眠障害
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