日本大学歯学部歯科保存学教室歯周病学講座連絡先:〒101-8310 東京都千代田区神田駿河台1-8-13を考察し,主訴の原因を追求するために一口腔単位での検査,診断を行うことで,再治療の少ない口腔内環境を実現するよう心がけている.個体差を見極め,エビデンスに基づいた治療を提供できるよう日々研鑽を行っている. 歯科既往歴 小児の時から歯科治療をたびたび受けてきたが,20年前に前歯部の被蓋関係改善のため抜歯をともなう矯正歯科治療を行い, 4 年前に再度,アライナー矯正歯科治療を行ったとのこと. その他 歯周外科治療への理解力は高く,積極的に治療を行いたい.■どのように検査を進め,診断したか:問診の後,口腔内およびデンタルエックス線写真を撮影し,歯周精密検査を行った.₆ には瘻孔を認め,検査の結果,歯根破折をともなっていたためホープレスと診断した.その他,上顎前歯部にう蝕や審美障害をともなう不適合修復物を認めた.また,₃~₃には,矯正歯科治療にともなう歯肉退縮と歯根吸収を認め,矯正歯科治療後のブラックトライアングルを改善する目的で施された不適合修復物を認めた(図 1).本稿では,主訴である下顎前歯部を中心に解説していく.■検査結果および治療計画説明時の患者の反応:歯2024年9月号患者のバックグラウンド検査・診断,治療計画 日常臨床で行う治療の内訳その他10%歯内療法20%修復治療20% 臨床経験年数 2020年明海大学歯学部卒業.吉野歯科医院での研修を経て,2021年日本大学大学院歯学研究科応用口腔科学分野歯周病学へ入学し現在に至る. 日本歯周病学会認定医,日本口腔インプラント学会,日本顎咬合学会会員.VISTA Institute Japanアシスタント,NEXUS講師のほか,K 2 ,情熱会,川口歯周病インプラント研究会,THREEE. 所属. 患者 患者は40歳,女性,専業主婦.穏やかで,治療の内容を理解しようと努力してくれる真面目な性格の印象.特記事項なし. 主訴 下顎前歯部の歯肉退縮が気になる. 4 年ほど前にアライナー矯正歯科治療を行ってから歯肉退縮が起こり,冷水痛を感じるようになったため,当科を受診した.患者の背景を踏まえて治療にこだわる若手 Dr. にご登場いただく欄キーワード:根面被覆,歯肉退縮,CTG,VISTAテクニック 診療方針 現在の口腔内環境に至った経緯 日々の臨床 歯周基本治療をとおして患者のthe Quintessence. Vol.43 No.9/2024—2013189189渡邉泰斗歯周治療30%補綴治療20%下顎前歯部の歯肉退縮にVISTAテクニックを応用しPMTを行った1 症例
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